
2020年10月からスタートした、横浜をつなげる30人 第1期。
「イノベーション都市・横浜」を宣言している横浜市を舞台に、オープンイノベーションの実現に挑戦する30人が集結しました。
”横浜という街の課題が解決されていくこと”、”メンバー自身が自分ごと化し楽しく取り組めること”を大事しながら、生まれたのが5つのプロジェクト。これらのプロジェクトを、1つのコミュニティとして取り組み、様々なプロセスをたどってきた30人のメンバーたち。
走り抜けてきた先に見えた景色は?
第1期の集大成の場であり、スタートラインに立つ日として、最終発表会が京セラ「京セライノベーションスクエア」で開催されました。
その様子をお伝えします。
コロナ禍だからこそ、期待できる取り組み

ここまで積み重ねてきたものをお披露目するという、集大成の場。
そのためか、緊張の趣を見せる横浜をつなげる30人のメンバーたち。
そんな中、いよいよ最終報告会がスタートしました。
横浜をつなげる30人をリードしてきた、横浜市立大学 芦澤先生がこの場を進行していきます。
まずは、今回ゲストとして足を運んでいただいた、林副市長にメッセージをいただきます。
林副市長
「コロナ禍の状況で、こうやって実際に集まる機会は少なかったと思います。そんな中でも、熱量高く取り組んでいると聞いていまして、本日はとても期待して参加しています。我々もコロナと戦い、なかなかうまくいかないことがたくさんあります。それでも、未来に向けて日々議論して、力を合わせて頑張っています。そんな状況だからこそ、皆さんのプロジェクトがどう発展していくのか?どう横浜市に影響を与えてくれるのか?がとても興味深く思っております。頑張ってください。」
穏やかな口調のなかに熱意を感じられるメッセージ。
刺激を受けたメンバーも多かったように思います。
それでは、さっそく各プロジェクトの発表に移っていきます。
今回発表に挑むのは、こちらの5チームです。
・多文化協働チーム
・ヨコハマランドチーム
・ANIHEXASITYチーム
・横浜電波組チーム
・ミライストチーム
多文化協働「多文化共生から多文化協働へ」

“多文化共生から多文化協働へ”
を合言葉に集まったこちらのチーム。
「横浜や日本全体の課題となっている、増え続けている外国人と日本人の間に生まれている壁に着目したところがスタートでした」と、話します。

「気軽に多文化協働ができる仕組みが作れないか?」
と試行錯誤をした8ヶ月。
その中で実施したのは、様々なゲストが集まるオープンセッションです。多文化協働のキーワードに関わる皆さんと対話し、そこから多くのヒントを得ることができました。


その後、10ヶ国以上の留学生に集まっていただき、「実際に外国の皆さんはどう思っているのか?」を模索する機会をつくり、「頼れる人とのつながりをいかに作れるか?」「言語の壁」の2つのポイントが大事だと理解できたそうです。
それらの結果、開催にいたったのが「SHIP」というイベントです。

ゲストスピーカーでのトークセッションや、「10年後の社会がどうなってほしいか?」をテーマに対話するセッションを実施、大きな手応えを感じることができたそう。

今後、この多文化協働チームでは、「横浜を多文化協働都市としてのロールモデルへ」をビジョンに掲げ、様々な取り組みにチャレンジしていきます。
多文化協働の課題解決へ挑戦するこちらのチームを、ぜひ応援してください!
▼チームメンバーの声
「大事なポイントは、参加者ひとりひとりがやりたいことを言った時に、全く違う視点で議論が起こったこと。コレ自体が価値だと感じました。ただ単に外国人と話すということではなく、多様な価値観が合わさったことにより生まれるものが大事だと思っています。」
「チームに参加しようと思ったのは、私自身も自分らしく生きていきたくて、個性を発揮することがノーマルである社会になったらいいなと思っていたからです。いろいろな方に参加いただいたことによって、それぞれがそれぞれのいいところを発揮する様を垣間見えることができました。そのワクワク感を持って、今後もより組んでいきたいです。」
▼林副市長からのコメント
「『多文化共生』ではなく、『多文化協働』というテーマがとても新鮮でした。昨年、「横浜トリエンナーレ」という国際現代アートの展示会を開催しました。現代アートというのは様々な造形物があって、何メートル感覚で”どこに何を置くか?”ということも、すごく大事な作品の主張になります。しかし、コロナ禍でアーティストが現地に来れなかったため、美術館の方がオンラインで実際の場所を見せながら展示物の位置を決めていきました。そして、そのことでお互いに多くの発見があったそうです。オンラインという形でコラボレーションして作品ができあがったことで、相互理解が進み、芸術の将来性を感じたとのことでした。そのことと同じような可能性を感じたプロジェクトでした。」
ヨコハマランド「横浜野菜のクラブチームを」

横浜の地で育てられる野菜 ”横浜野菜“に着目して活動するのが、こちらのチーム。
横浜市には3,400件の農家さんが活動していて、その業産出額は神奈川県内でトップだと話します。しかし、なかなか認知度は上がらず、苦労されている農家さんもいらっしゃるのだそう。
その実情を探るためにも、オープンセッションや農業体験、そして農家さんへのヒアリングを実施し、チームとしてのビジョンが定まってきました。
それがこちら。

これらを実現していくために、「スポーツのクラブチームのような形を農家さんで実現していく」と方向性を定めました。

横浜野菜の利点としてあげられるのは、住宅地に隣接していることが多いため、足を運びやすいというところにあります。
それを活かし、生産者と消費者がいい関係性を結び、お互いの課題を理解し合える持続可能なシステムを構築していきたい。それがこのクラブチームのシステムです。


区ごとにこのチームが結成されて、消費者の皆さんは様々な関わり合いを持つことができるようになっていきます。まさに、スポーツのファンクラブとかなり近い構想ですね。

今後は、このクラブチーム構想をメインに展開していくそうなので、横浜野菜の盛り上がりが期待できますね!
▼チームメンバーの声
「チームの皆さん、最初は横浜野菜のことを何も知らなかったんです。でもチームでの取り組みを通じて知ってもらえて、それがとても嬉しいです。この輪を今後広げていきたいと思います。」
「実際に農家さんとお話できたことがとても楽しかったです。これは僕だけじゃないと思うので、同じような体験できる人を増やしていきたいと思います。」
「本業でコミュニティづくりをしていて、その観点からこのチームに参加しました。この取り組みを通じて、もっと地域を知ってつながっていきたいという気持ちになっているので、コミュニティの視点としても学びが多かったです。」
▼林副市長のコメント
「素晴らしい内容でした。特にクラブチームに見立てているところが、いい発想だなと。横浜は地域コミュニティが深く形成されている地域ですが、少しずつそのつながりが希薄になってきています。そんな課題も野菜を通じて解決できるんじゃないかなと、期待を持つことができました。農業こそ地域コミュニティの構築につながっていくと思います。」
ANIHEXASITY「新しいチームの形」

チーム全員が異なった領域を追求していくという、ひときわ異彩を放っているのがこちらのチーム。
6人がそれぞれ取り組みたいテーマを設定しつつ、お互いに手を取り合いながら進めていくという、まさに”つなげる30人“の在り方をチームで実践しています。

メンバーをレンジャーのキャラクターとして表現し、「人の心の感動/愉しさ/幸せのために!横浜市の人の行動からつなげよう!」をチームビジョンとして活動しています。
それでは、それぞれが取り組んできた活動内容を見ていきましょう。
まず、レッドの橋本さんは、ANIHEXASITYチームのWebサイトを制作していきました。

イエローの遠藤さんとブラックの井形さんが一緒に進めてきたのが、「横浜18区PRと食」のプロジェクト。

レッドの橋本さん、グレーの坂本さん、ブルーの浅川さんが取り組んでいるのは「心に響く喫煙・禁煙空間の実現」プロジェクト。

「フード X アート X エネルギー Project Thanx Giving」プロジェクトはグリーンの佐野さん、ブラックの井形さん、ブルーの浅川さんが取り組んでいます。

このようにジャンルが様々な取り組みを同時並行で進めているのが、このチームの最大の特徴と言えます。
この新しいカタチのチームの在り方には、メンバーとしても意識的に取り組んだらしく、それぞれがこのように実感を得られたそうです。


今後、このチームがこれからの新しいチームの在り方を体現していき、その結果横浜市へどんな影響を与えてくれるのか?が、とても楽しみですね!
▼林副市長のコメント
「行政は常に複合的課題に向き合っています。レンジャーの在り方がうまく進むと、希望になるなと思いました。また、他のチームとの連携ができると、もっと可能性が広がるなとも思いました。そのあたりにも、今後期待していきたいです。」
横浜電波組「横浜を、“暮らしのDX”のモデルシティへ。」

「横浜を、“暮らしのDX”のモデルシティへ。」
そんなビジョンを掲げ、日々活動しているのが横浜電波組です。
最終報告会を迎えるまで紆余曲折あったと話すチームですが、チームが結成されたきっかけはとある小学校が影響しているそうです。
コロナ禍で次々とイベントが中止となっている小学校。
そんな中、体育祭や卒業式をデジタルの力を活用して実施した学校がありました。
その活動を受けて、「誰も取り残さないデジタル社会」へ向き合っていくことが決まっていきます。

まず、社会実験として行なったのは「よこはまアイディアチャレンジ」というビジネスコンテストの、オンライン開催サポートです。

イベントはとても好評で、「うちでもデジタル化できない?」と引き合いがあったそうですが、「自分たちはオンラインイベント屋になりたいんだっけ?」という原点に立ち返りました。
そこから、オープンセッションを実施。
それらを通じて、こちらの気付きを得たそうです。

ただ、先程事例としてあがっていた小学校の例はとても稀で。多くの場合は、デジタル格差やコミュニティ断裂が進行していると話します。デジタルという選択を持つことができず、取り残されているコミュニティは多いのだそうです。
その現状から見えたやるべきこととして、「コミュニティへの外からの働きかけと情報(事例とノウハウ)の流通により同調圧⼒を逆転させる」こと。
エリアに囚われず活動できるテーマですが、まずは横浜というエリアに絞り、コミュニティによるデジタル活⽤のモデルケースを量産。その事例やノウハウの普及を図ることで、クリティカルマスへの到達を狙い、横浜を「核分裂・連鎖反応のスタート地点」にすることを目指します。

今後は、金沢動物園とコラボし、オンライン番組を配信していくそうです。楽しみな取り組みですね!
▼チームメンバーの声
「来月の動物園の案内は私が担当することになり、すでに緊張しています。親が70歳を超えていて、なかなかデジタルを使いこなせておらず、電話がメインのコミュニケーション手段になっていることがわかり、課題意識を強く感じています。」
「気がついたらいろいろと進んでいて、このプロジェクトをすごくおもしろく感じています。ぜひ皆さんイベントにご参加ください!」
「紆余曲折で疲れを感じたこともありましたが、なんとか走り抜けてきました。面白いことになっているので、ぜひ楽しみにしていてください!」
▼林副市長のコメント
「行政でもDXはとても重要視しています。「誰も取り残さない」ということをやり抜くには、かなり工夫をしないといけません。横浜市には90万人以上の高齢者がいらっしゃいますが、その皆さんをサポートしきるということになります。小さなところから色々アプローチしていくことで、取り残されるひとが減っていくと思いますので、ひとつひとつ頑張ってほしいなと思いました。」
ミライスト「人が自由に組織を越境して、働く文化を」

イノベーションに着目して取り組むのが、ミライストチーム。
横浜には多くの企業やスペースが集結していて、イノベーションの街となるために必要な最後のパーツがあるといいます。
それが、「人と人が繋がる仕組み」。

「つながる、だけどとらわれない」
をコンセプトに、そのラストパーツへアプローチをしていきます。

毎週のようにミーティングを重ねて、具体的に出てきたアイデアがこちらの3つです。




ミライストラボは実験的に2度開催し、多くのアイデアが出てきたそうで、その数はなんと3時間で159個!これには大きな手応えを感じたそうです。
満足度は90%と高く、今後も定期的に開催していくことを目指していきます。

ミライストキャンプでは、市内の酒屋さんに訪問し、課題のヒアリングや課題解決のアイデアを提案するなどのアクションを実践。
こちらは、9月から3ヶ月間のプログラムを企画し、動かしていくそうです。

今後、ミライストの活動を横浜へ広げていくために、長期的な視野でプロジェクトに取り組んでいきます。お楽しみに!

▼チームメンバーからの声
「仕組みや文化なので、なかなか想像しにくいプロジェクトです。でも、実際に動いていく中で色々発見がありました。まさにイノベーションだなと。自分ごと化できてきたので、ぜひ皆さんとも一緒にやっていきたいです。」
「自分が生まれ育った横浜が、世界へ発信できるものにしていきたいと思っています。様々なシェアリングが流行っていますが、スキルのシェアリングも実現させていきたい」
「なんどもなんども話し合って、いちからやり直しもして、やっとここまで来ました。具体的な取り組みにすると、それぞれ目標が違っていたけど、その違いが共存しながら進めていけることに希望を感じています。」
▼林副市長のコメント
「感動して涙が出そうでした。横浜市は”市民力の街”だという確信があります。行政の力だけではなく、市民力でここまで発展してきました。ここから横浜市が一歩先に踏み出していくために、一人ひとりがつながりをつくることが必要になってくると思います。応援しています。」
走り抜けた先に見えた景色

すべてのチームのプレゼンが終了し、横浜をつなげる30人 第1期も総括に入っていきます。
ここまで運営してきた、芦澤先生と吉永先生、横浜市立大学 国際教養学部⻑ 鈴⽊伸治教授、そして林副市長よりコメントが贈られました。
芦澤先生
「素晴らしい活動が5つも動き出し、とにかく胸がいっぱいです。このプロジェクトは、対話型、実践型、継続型、この3つのテーマをもって取り組んできました。前例のない1期目に、こうやって飛び込んでくれたこと自体が実践です。さらに半年間、フィールドに出て実践を通じて得られたこと、これらを改めて感じてほしいと思います。結果としてこの街を前より好きになってくれたんじゃないかなと思っています。第2期もやりたいと思ってますし、継続的に発信していきますので、この先も楽しんでいきましょう!」
吉永先生
「私は対話にこだわってやってきました。本日改めて感じたことがあります。そのような考えもあるよね、と受け止めることができても、その考えが腑に落ちていかないとなかなか人は動くことができません。でも、皆さんはそのような状態でも動き続けてくれました。それがとてもすごいことだし、実現できた関係性を誇りに思います。私も仲間に入れていただき、本当にありがとうございました!」
鈴木教授
「とてもワクワクするような提案が゙多くて、たいへん面白かったです!課題解決だと真面目になりがちですが、ワクワク感が人を巻き込んで゙いくんだと思います。またPoCの段階では改めてコンセプトの強さが゙求められます。コンセプトがしっかりしていれば、より多くの人にメッセージが届くと思います。頑張ってください。」
林副市長
「皆さん、社会課題に真剣に向き合ってくれて、本当に感謝しています。私もまだまだ守りに入っちゃいけないなと、勇気づけられました。今日がスタートラインとして、今後もいっしょに頑張っていければと思います。なにかあれば、我々に相談してください。ありがとうございました!」
温かい空気に包まれた最終報告会。
メンバーそれぞれが、様々な想いを抱えていると思います。
それが実ったのも、ここまで走り抜けてきた道のりがあったからこそですし、築かれた関係性があるからこそ。
この日をスタートラインに、これからも横浜市をつなげる30人として活躍していってほしいと思います。
皆さん、お疲れさまでした!
Good Luck!

文章:長田涼
写真:横浜市立大学提供