【京都をつなげる30人 第2期 Day6】〜最終発表会。新緑眩しく芽吹く春〜

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京都をつなげる30人Day6

あたたかな陽光を受け、草花が芽吹きはじめる3月。
京都は山も町も、あちらこちらに若々しい緑色がのぞきはじめます。
そんななか、2020年11月からはじまった京都をつなげる30人第二期の最終発表が行われました。

この半年間、各チーム、オンラインでのもどかしさを感じながら、また、工夫して実際に会う場をつくって、それぞれの思いを形にするやりとりを重ねてきました。ここまでをやりきったという爽快さ、そして、発表に向けて少し緊張した面持ち、集まった皆のさまざまな表情から、発表への期待が高まります。

それでは、早速各チームの最終発表をご紹介します。

持続可能な観光 〜サキューラーエコノミーのプラットフォーム

「持続可能な観光」をテーマにしたこのチーム。

観光とは「光を観る」と書く。その文字通り、人と人、人と地の関係性に光を観るような「地域」をつくりたい。と、2つのプランを発表。

① TauT阪急洛西口で地域の人とのつながりをつくる「新しい観光」の創出〜想いが循環するサーキュラーエコノミーのプラットフォーム構築〜

阪急洛西口TauTを拠点にした、サーキュラーエコノミーを体験できる様々なコンテンツを企画。

今年2021年7月までに、
・地域住民と一緒にオリジナルの探求マップをつくる「サーキュラーエコノミーが体感できる!SDG’s探求ツアー」
・廃棄野菜を使った料理教室、バイオガス装置を使って、廃棄ゴミを一切出さないごみゼロマルシェ
といったイベントを、地域で活動されているNPO団体や農家さん、大学などとも連携しながらすすめ、サーキュラーエコノミーのプラットフォーム化をしていく構想を発表してくれました。

阪急洛西口周辺のエリアはニュータウンとしての町開きから40年。少子高齢化、コミュニティの希薄化といった、ニュータウン特有の課題が表れてきています。

その地域に、子育て世帯を呼び込み、コミュニティ再生するだけでなく、サーキュラーエコノミーの先進地域として、ここでの暮らし自体があらたなサステナブル観光のコンテンツになることを目指します。人が来るほど地域が良くなる「TauTビレッジ」の構想を描いています。

②錦市場商店街における持続可能な観光の在り方〜食べ歩き問題解決のためのマナー啓発〜

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3月末までに、食べ歩き、それに伴うゴミ問題を抱えている錦市場商店街で、食べ歩き観光マナー啓発キャンペーンを実施。 商店街に、タペストリーを掲げ、タペストリーにかかれたQRコードからは、飲食店の普段の様子も伺うことができます。商店街では、近隣の幼稚園の子どもたちの歌声と共に、マナー意識向上のためのメッセージを流します。

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タペストリーは京都出身の書家 稲垣尚に依頼

このチームは、実際に地域で場を持ち動いているエキ・リテール・サービス阪急阪神さん、錦市場さんの、現場の困っていることと地域の課題解決について、SDG’s観光を推進したい京都市さんや、持続可能な事業では専門家的立ち位置のアミタさん、CHIE-NO-WAさんと一緒になって、「SDG’s」をキーワードに話し合い協力しあった良い事例となりました。

セクターを超えた協働をすることで、それぞれの地域の課題を解決しながらSDG’sを先導する地域に育てていく、こうした展開を他の地域でも起こす良いモデルケースになりそうです。

持続可能な京都企業〜Relocal

発表の時間になった途端、さきほどまで、それぞれの画面にいたメンバーが、おそろいの「Relocal」Tシャツで同じ場に揃っている、というサプライズをみせてくれたこのチーム。

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Tシャツにも書かれた「Relocal」とは、再生する自然や文化&コミュニティで「持続可能な未来」づくりを楽しむ提案。そのコンセプトに基づいたプロジェクトを発表してくれました。

◇木造コワーキングハウスにてワーケーションの場づくり

京北、余野地域と連携し、週80%はリモートワーク、残り20%は現地での仕事(農作業・デジタルワーク)や価値体験をすることで、都会に暮らしているだけでは味わえない豊かさを提供する木造コワーキング施設を構想。

格安古民家の賃貸物件で、個人で一ヶ月ほど滞在できるプランや、遊休地を広場として活用し、アウトドアライブやドローン飛行イベントを開催するアイデアも。

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(京都北部の京北 余野地域と連携)

「Relocal」は、商標登録済、ホームページも立ち上げ、会員になりたい方は、申し込めるフォームまでできているという本格ぶり。

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「Relocal」(=持続可能な京都企業)が、地域、企業、人をつなぐ輪になる未来を目指します。

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それぞれに「地域に入って、地域のためにもなることをやってみたかった」という思いをもっていた皆さんが、こうして集まることで、ご縁がつながり実際に足を運ぶことができ、行った先では、もうはじまっていた。というような勢いのあるこのチーム。

市内に場を持つガーデンラボさんを地域とつなぐ拠点としながら、地域に根ざした活動を長くされてきているNPO法人みのりのもり劇場さんの経験、事業化していく㈱fujitakaさんの力や、みずほ銀行さんの様々な企業とのネットワークを活かし、NPO法人グローカルインターン生の若いエネルギーも熱量に、次々に構想を具現化していってくれそうな期待に胸が膨らみます。このチームの在り方も、展開していくプロジェクトも、今後の地域活性化のロールモデルにもなりそうです。

チームのリーダー的存在の㈱fujitakaさんの、「色んなアイデアがまだまだある。つなげる30人が終了しても、ぼくたちはスタートできる。という環境にある。」という言葉は、来たる朝を知って暮れていく空のような落ち着きをもって響きます。

皆のTシャツの色、SDG’sのカテゴリーのなかで「連携」を表す紺色は、つながって、ひとつの薄暮の空のようにも、夜明け前の空のようにも見えました。

多様な人が共にくらす京都〜孤立しやすい人々を場所を通して緩やかにつなげていく

こちらのチームは、 若者や高齢者が陥りやすい社会的孤独の問題に焦点をあて、「社会的孤独ラボ」の構想を発表。

◇社会的孤独ラボ

フラットエージェンシーさんが、京都市市内に展開しているスペースを活用して、社会的孤独を感じている人が、気楽に足を運べる場をつくります。3月末〜4月にかけて、学生向けのイベントを開催しつつ、4月以降、オンラインサロンとの併用もしていき、ラボという名の通り、ただ集まるだけではなく、社会的孤独について、当事者が主体的に探求する場所にもしたい、ということです。

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(京都市内のいくつかの拠点をつなぐ構想)

こうしたことは、学生だけで立ち上げようとするとなかなか難しい局面も多いものですが、すでに、学生が200円といった学生価格で食事もできるようなスペースつきの賃貸物件も展開しているフラットエージェンシーさんは、居住者にも紹介しやすく、当事者の肌感覚を持った京大生は、現場の若者をつなぐ役割に。

さらに、自死相談も受けている僧侶のつながりや、NPOのネットワークをもったテラエナジーさんがいるという大きな安心を持ってスタートができる、それぞれの個性が生かされた共創の姿が見えます。

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(約50㎡のレンタルスペース「TAMARIBA」)

こういった新たなスペースが、西洋の教会のように、気軽に足を運べる心のよりどころになる。特に学生の町といわれる京都で、そういう場所が若い人たちに開かれていくことは、この町の未来にやさしい風を吹きこんでくれそうです。

京都の多様性再発見 〜 京都で暮らせば

「住む」から「暮らすへ」、「誰かが」から「私たちが」へ。
「消費する」から「生み出す」へ、「競争」から「共創」へ。

このチームは、自らが作り手になれる現在進行系の地図を発表。

自治会・町内会への加入率が下がり、伝統産業・文化の衰退が危惧される京都。京都に住んでいても、特につながりもなく、暮らしている。という感覚がない人も多い。けれど、まだまだ京都には、無意識的に継がれてきている美しい文化がある。それを、そこに暮らし、知っている人たちが自分たちの物語を音声で投稿。その音声や声は地図上で可視化され、街に暮らす感覚を疑似体験できるようにしようというこの地図。

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Strollyという地図アプリを使って、たとえば西陣にあるピンを選択すると、そこでの西陣織の音が聴こえてきたり、長者湯というピンを選択すると、お店の店長の日常の様子を語る話声が聴こえてきたりします。そうした雑談、対話、暮らしの音、で、人々の無意識に立体的にはたらきかける地図、というコンセプトで、プレゼンでは、実際にバーチャルツアーを体験できました。

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今後、メンバーの直七法衣店さんが、職人さんのハブとなって、さまざまな職人さんの音や声を集めにいくとのこと。新しい京都への視点を届けるツールとして、京都市さん、フラットエージェンシーさんとも連携した動きも起きそうです。

2週間に1回2〜3時間くらい雑談・対話を繰り返していたら、目先の利益を全員が手放して、長期的な目に変わった瞬間があった、というこのチーム。それを生んだのは、この雑談・対話だった。ということで、このプロセス自体を価値として、これをコンテンツにしようとなったとのことです。

京都市のためになるのは、わたしたちのためなはずなのに、公・行政がなんとなく、だれのものでもないからと、暮らしの外側の存在になっている感覚がある。

自分たちの町の魅力を自分たちで発信し、知り合っていく。自分も地図の作り手になる、それは地図上に自分の暮らし色の町の色塗りをしていくような体験かもしれません。それらの色の重なりに、いくつもの豊かな新しい色合いが生まれそうです。

「多様性を包み込む柔軟性をもつ強さの経験を積む、経験の土台を経験していくという、このまわりくどく、面倒くさいことが、未来で大切なことの種になる。」と話すのは、京都下鴨修学館を運営しているCiftさん。一見、面倒で時間がかかるやりとりのなかから、長く大切にされることが生まれるのは、京都で暮らす人たちは、皆感じていること。

けれど、それはこういうことです!と明言されるものでもなく、空気のように京都という空間に漂っていて「そっと感じられるもの」である、というのもまた美しさ。

そういう京都の魅力を、他の地域の人にも体験してもらえることは、京都だからこそ発信できるSDG’sのコンテンツになりそうです。

持続可能な働き方

こちらのチームは、「働く」をキーワードに、各メンバーの活動の延長上でできることを提供しあう、できることを提供しあっているうちに、コミュニティになり、それ自体もプラットフォームになっていく、という構想を発表してくれました。

子育てしながら働けるコワーキングスペースを運営しているオトナリラボさんは、子育てと働くの共存を考えるミーティング、オンライン座談会、noteでの発信を。京都信用金庫さんは、京都ではたらく人へのインタビュー記事制作やclubhouseでの発信を。ツナグムさんは、「はたらくを巡る」と題した大人の社会見学、働きかたを体験ツアーを。そして、ヒューマンフォーラムさんも一緒に、いまそれぞれがやっていることをつなげて、Beyond careerという会員制新サービスの立ち上げを構想しています。

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(「子育てと働くの共存を考える」オンラインイベント byオトナリラボさん)

京都信用金庫さんのクエスチョンでは、京都をつなげる30人第一期のメンバーも出入りしていて、「京信まちの人事部」のメンバーなどと、期をまたいだ交流が起きていましたが、今後も、クエスチョンさん、ツナグムさんが、そうした架け橋になってくれる予感がします。

コロナ下で「働く」のカタチもますます多様になっていくなか、さらに実際には「働く」のなかに、世代によって、就職したての不安、子育て、介護など、様々な事柄が関わってきます。

働くをテーマにしつつ、働くを超えてつながっていく、そのコミュニティから、あたらしい働き方、ひいては新しい街の姿も浮かび上がってくる、そうした場に、京都市さんも一緒にいて、プロセスを共有していることは、今後の都市経営戦略にも活かされそうです。

シン・ブランディング

最後は、地域の空間をつなげてシン・ブランディングしてメッセージを発信する、というプロジェクト。

地域には、市役所、ホテル、スタジアムなど、たくさんの空間がある。だけど、それらのメッセージはバラバラ。そこで、地域内のキーとなる空間を面として捉え、共通のテーマのイベントと広報で、地域の個性や文化を表現し、地域のシビックプライドを高めることを目指します。

スノーピークさんがアウトドア要素を使った空間で身体を動かしたり、地域のことを対話するイベントを行い、地域ウエダ本社さんが、カベシンブンなどでそのプロセスを伝えていく役割を担います。

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西陣織りで知られる西陣エリアは、以前は高級絹織物産業で栄えた場所。明治〜戦後にかけての日本の西洋化と共に和装文化は急スピードで衰退、西陣の絹織物産業だけでなく、機業を支える丹後ちりめん産業にも影響を与えました。

今後新しいカタチでのSDG’sツーリズムへの取り組みを構想している西陣エリアの人たちと、ウエダ本社さんが地域づくりを始めている与謝野町エリアをつないで、シン・ブランディングすることもできるのでは。

地域が誇りを持って新しい文脈でつながりあうことで、都市の新しい姿が見えてきそうです。

 京都が自らの手で都市をつくり変えていく

どのチームも、チームワークの良さ、考察の深さ、動き出す思い切り、長く続けられる自然体さと、それぞれの個性が際立ちつつ、新しい未来を予感させてくれるプロジェクトの発表でした。

最初に京都市長から、観光依存から暮らす街、京都へ。というメッセージがありましたが、実際に住んでいる人一人一人が自らの意思で、動き出す手触り感を感じられました。

これから京都の観光が変わり、企業が変わり、暮らしが変わり、働き方が変わり、地域が変わっていく。

住民が主体になって、さまざまなことが変わっていくさきに、それらがつながって、来年度の京都市のSDGツーリズムプラットフォームになり、さらに、3年後の京都市の都市経営戦略に反映される。

「一人ではどうにもならない現実」なんかじゃなく、みんなでそれぞれにつながっている京都という町の未来がありありと目に浮かぶようでした。

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チェックアウトでは、

・連携や新しいことが生まれていくことを見られ、実感できて、貴重な体験ができた。
・会えない30人とどうやって仲良くなれるのかな。と最初不安だったけれど、声をきいて、顔をみて、温度を感じられる時間だった。
・変わったことを嘆くのではなく、じゃあ、いまからどう生きるのか、と考えられる人が集っていた場だった。
・まだ若いし、私なんて、と、できない理由を並べ立てていたけれど、自分ができる、ということを腹落ちして体験できた。 こうした体験を、自分も広げていける存在になりたい。
・新しい人たちとの出会いもあり、関係性の再構築もできた。正直、こんなに仲良くなるとは思わなかった。
・いつもと違うことをやろうとすると、力みながらやっていたが、今回は、石がポチャンと落ちて広がる波紋の波に乗った感覚。 エネルギーにまかせていて、良い流れのなかにある、という感じがある。

と、それぞれの豊かなハーベストを語ってくれました。

この先も、この30人とはじまる。
街のなかを歩いていると、仲間があちこちにいる。
自分たちでつくっているよね、共に歩いてきたね、と京都の地をふみしめる。
希望の景色のなかに、すでにわたしたちはいる。

2021年3月、京都は新緑眩しく芽吹く、春です。

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