10月29日に始まった”京都をつなげる30人”。
前回(Day2)は取り組む「テーマ出し」と「プロジェクトチーム作り」を行い、8つのテーマが生まれました。
今回からは、アイデアの種を育む「発想フェーズ」から1ステップ上がって、プランニングを行う「企画フェーズ」に入っていきます。1月にテーマ毎に開催するオープンセッションに向けて、テーマとその中身を30人が協働して磨きあいました。
30人全員で、自分たちのテーマをイノベーションテーマとして磨く
30人全員で、これから各プロジェクトチームがそれぞれ関係するステークホルダーを招き入れて協働し、社会課題解決を本格化させていきます。
その時に重要となる「クロスセクタープロジェクトの循環フレームワーク」についてDay3では最初に学びました。
野村
『この図では、クロスセクターでどのように協働していくのかを2重円で表しています。まず内側の小さい円は、各プロジェクトチームの中で、それぞれのメンバーがリソースを持ち寄って社会課題解決を行うという「小さい循環」です。一般的には、この内側の小さい円の協働が中心になっているかと思います。
ですが、より持続的に、そしてコレクティブにインパクトを出していくためには、メンバー1人ひとりの個人的な立場から一歩俯瞰して、「それぞれが属している企業・NPO・行政組織にとってどんな意味があるのか」をお互いに握り合いながら進めていくことが重要です。ここをしっかりと押さえられていると、無理することなく、持続的に続けやすくなります。
いちばん上手く進むケースは、例えば、行政とNPOの人が企業の都合を理解して動いてあげる、あるいはNPOと企業が行政の都合を理解して動いてあげる等のように、お互いがお互いの事業を理解し合いながら、そしてそのロジックをサポートし合いながら協働していく。このようなバランスを上手く取っていくことを目指すのがポイントになります。』
京都をつなげる30人の「1/30」
さて、Day3の会場はこれまでの龍谷大学ではなく、「京都をつなげる30人」メンバーである株式会社ヒューマンフォーラムのmumokuteki hallをお借りして行いました。ヒューマンフォーラムといえば社員の人財育成に熱心に取り組まれ、多種多様な社内研修を行っている事でも有名です。
そこで、「小さい循環」「大きい循環」2重円の協働に向けて、ヒューマンフォーラムらしいチームビルディングセッションを、参加メンバーの一人であるヒューマンフォーラムの人財育成部部長、げんちゃんに企画・リードしてもらいました! ずばりテーマは、「京都をつなげる30人の30分の1」。
1つ目のワークは、「偏愛マップ」。それぞれが、自分の偏愛を紙に書き出し、ペアでシェアを行いました。
大好きなことを喋るときに発せられるエネルギーは、本当にすごいものがありますね。皆さん夢中になっている顔がこぼれていました。
げんちゃんよりポイントを解説。
げんちゃん
『みなさん、意外な一面があったり、新しい発見をしたり、共通の事を見つけたり、あるいは相手の話を聴いて自分の古くの記憶を思い出したりしたのではないでしょうか。この偏愛マップワークでは、普通に話しているだけでは見えてこない、相手の意外な一面が出てきます。
この偏愛マップは、ヒューマンフォーラムでは、入社してすぐの「楽学塾」の研修の中で必ずやっているワークです。なぜ行っているかというと、人間は「関心を持って、知っていくと、相手の事を好きになる」んですよね。「知れば知るほど、距離が縮まる生き物だ」ということなんです。
そうして30人一人ひとりがお互いを知っていくと、この「京都をつなげる30人」の場がもっともっと新しいものが生まれていく土台になっていくと思っています!』
2つ目のワークは、「形容詞×名詞」。
形容詞と書かれた空欄に思いつく形容詞を書き、名詞と書かれた空欄に思いつく名詞を書き、ちぎって2枚に分けて、4~5人のグループをつくってでシャッフルしてランダムに手渡された形容詞と名詞に書かれている言葉を組み合わせて、それを自分のニックネームとして、そのニックネームが付いてしまった架空のエピソードを作り上げてチーム内で自己紹介をしあいます。
「具とバンズがずれた音楽」「踊る姉さん」「笑いが止まらないトイプードル」「エモい体」「たのしいハンバーグ」「静かに笑うたぬき」「二日酔いの主賓」「ムーンウォークする犬」「ハード系の裸電球」「熱狂的な唐揚げ」「ギラギラまぶしいグミ」・・・ここではもう、ドッカンドッカン爆笑の渦です。
げんちゃんよりポイントを解説。
げんちゃん
『ヒューマンフォーラムでは、「人と人とがつながる接着剤となるのは、やっぱりユーモアだ」と思っています。ユーモアを感じて「ワァ!」ってなっている時の脳は、みんな繋がっているんですよ。
一緒になっている気がするというか、リンクしているというか。その感覚を常に維持していくような心がけを出来ると良いなと考えています。
なぜかと言うと、正解を求めようとすると頭が固くなって、「こう言わないといけない」という発想になりがちですよね。そこで、ちょっと面白いことを言ってみて皆で「ワァ!」ってなって、その空気感のままもう一度真面目な物事をとらえなおしていく。
そうすると、一人ひとりの色んな発想がアウトプットされ、新しいものが生まれてくるんです。この感覚を是非覚えておいてもらえたらと思っています。
そして、もう1つの気づきは「アイデアとは平凡と平凡の掛け合わせで出来るんだ」ということです。「むちゃくちゃ面白いニックネームを自分で考えて自己紹介してください」というワークだと、緊張しますよね。
けれども、何の根拠も無く書いたことがランダムに組み合わることによって、全く想像することも出来なかったものが生まれるのです。
私たちも、自分らしさが掛け合わさることによって、すごいアイデアだったり、誰も想像しなかったことが生まれる。これがチームでやっている意義だと思うんです。是非この30人でやっていきたいなと思っています!
また、「ニンゲンは、ジブンのことは見えないが、ヒトのことはよく見える生き物」です。自分で色んな事を考えても整理がつかないけれども、第三者の目から見て整理するとすごくしっくりきたりすることがあると思います。
ここにいる一人ひとりが鏡になって、このプロジェクトにあの人を呼んだら良いんじゃないかみたいな接着をしていくと良いなと思っています。
今日のテーマは「1/30」でしたが、一人ひとりが30人に対して関心を持ったり、互いに組み合わせていくことによって、1/30×30/1=1以上になると思います。Day3にして新たなスタートを切って、偶然集まった一人ひとり、30人全員で何かをつくるところに関って、一つになれたらと感じています!』
30分セッション
「30人として1つになってやっていくんだ!」という気持ちが高まってきたところで、30人内での30分セッションを、8プロジェクトそれぞれで企画していきます。
①問いを共有 ②多様な知識を持ち寄る ③アイデアを広げる ④アウトプットを共有する
というステップで組み立てる30分。
手法を1つに絞って、20分間のセッションを組み立てます。
「クロスセクタープロジェクトの循環フレームワーク」を意識しながら、「自分たちでやろうとしているプロジェクトについて、みんなとどんな話し合いができると、30人の持っているリソースを活かせるだろうか?」と考え、自分たちで問いをつくっていきます。
その問いについて、ワールドカフェでみんなで深めていくのか、あるいはブレーンストーミングで沢山アイデアを出してもらうのか。
それぞれのプロジェクトチームメンバーで最善のものを企画して、セッションスタートです。
門川京都市市長にも途中参加いただき、期待と激励の言葉を頂戴しながら、各プロジェクトチームの30分セッションが繰り広げられました。
ファシリテーションに慣れているチーム、参加者の協力を得ながらワークを進行していくチーム。各チームのカラーを互いに引き出し合いながら、協働作業をつむいでいきました。
イノベーションファシリテーターとして
30分セッションを終え、改めて協働を呼びかけるファシリテーションの難しさ・楽しさを感じられたみなさん。
ここで、「イノベーションファシリテーター」と「問い」について学びました。
野村
『ファシリテーターとして大事なことは、上手に話すこと以上に、参加者の声をしっかり聴いて解釈して捉えていくことです。
何のために集まっているのかが共有され、参加者が気持ちよく自分のアイデアや物語を話せるような場になっていること。結果として、そこから出てきた様々な洞察をファシリテーター達が的確に掴み取って、それを持って次のステージに進んでいくこと。それがとても大事になってきます。
そしてイノベーションを起こすためのファシリテーションの難しさは、アイデア発案者の突き抜ける想いや力が大事な一方で、それがあまりにも強く押し付けられると、参加者側が自分事にすることが出来ないというジレンマです。そこで参加者に寄り添い引き出すファシリテーションが非常に重要になってくるのです。
一般的には、「突き抜ける想いと力」と「寄り添い引き出す力」の間に妥協線があって、自分のアイディアを出しすぎるとみんなの意見が出ず、みんなの意見は出るけれども何となくイノベーティブなアイディアにならないという事態に陥りやすいかと思います。どうやって、この2つを高いレベルで両立するのか?
イノベーションファシリテーターとして重要なのは、みんなが話していくと自然と良いアイデアが出てきてしまうような、強い問いを投げかけることです。
1月のオープンセッションでは、「今までだったらこのような問いで考えてきたよね」という既存の問いからもう一段階進んで、参加しているステークホルダー達が自らアイデアを出し、自らやってみたくなるような新しい問いを投げかけられるところを目指していただきたいと思います。』
8プロジェクトの最前線
長かった1日も終わりに差し掛かり、それぞれのチームの最前線を共有し、この日のまとめに向かっていきます。
野村
各チームの最前線が良い感じで進んでいるかと思います。それぞれのチームがある程度アイデアが進んできて、難しさも感じつつも、こういうことをやれたら良いなということが少しずつクリアになってきたように感じます。そもそも論に戻っているのも良いと思います。そうやって根本的なところに戻ることによって革新的なアイデアが出ることもあるからです。
この後の時間では、「本音のところ、それぞれの人の組織にとって、このプロジェクトってどんな風に良いの?」という話をしてほしいと思っています。
例えばビジコンのチームって、皆さんの善意の塊のような話し合いをしてきたと思うんですが、不動産で考えたらこれはうちのメリットだよねとか、銀行としてはこういうことだよねとか、イノベーションセンターとしてはこういうことをしていけたら良いよねという、すこしエゴもむき出しにしていただきたい。
その上で「とは言え、あんまり繋がらないんだよね」という人もいると思います。「なんか繋がるんじゃないか」と一生懸命一緒に考えて、最終的に自分のチームのプロジェクトに繋がらなくても、他のチームに繋がって「実はうちのビジネスになる」という人もたまにいるんです。そういうことも含めてゆっくり考える時間を取りたいと思います。
まずはチームの中でベネフィットを考える。そして途中、自由に他のチームのところにも行って、そこのチームで「こんなことを自分は出来る」と言う話もしていただいて構いません。腑に落ちた状態でオープンセッションに向かって行きたいと思っています。
オープンセッションでは、渋谷の場合ですと行政の方は関係する部門の方を招いて頂いたり、あるいは企業の方は自分のやっていることを分かってもらおうと言う事で会社の人を招いたりしています。
そう考えた時に、「自分の組織にとってこういう意味があるんですよ」と説明した方が誘いやすいと思いますので、ぜひ自分自身の「このプロジェクトがなぜ京都にとって重要なのか、こんなメンバーでやるからこんなにすごいんだよ、ちなみにこれは一歩引いて考えるとうちの会社にとってこういう意味があるんだよ」というストーリーを各自が作れる時間にしたいと思います。』
チェックアウト
30人全員でアイデアを磨き、ファシリテーション実践にチャレンジし、新しいパワフルな問いと大きい循環に向き合ったDay3。
最後に、いつものように胸にある想いを共有してチェックアウト。
語られたチェックアウトの一部をご紹介します。
「壁にぶつかるとウッってなるけれど、そこで分かりやすい答えを直ぐに出しちゃうのではなく、味わい楽しんでいきたい」
「オープンセッションを迎えられるのかヒヤヒヤしているけれども、自分でやりたいと思って考えている事なので、ステークホルダーに伝えていきたい」
「言語化できないモヤモヤしているところにイノベーションが隠れていると思って、カケラでも見つけていきたい」
「大爆発を起こしたい」
「1000年先までやるんだという覚悟!」
「振り返ってみて、5年くらいプロジェクトを一緒に進めている社内メンバーに対するのと、同じような温度感で30人と話すことが出来ているのが不思議だと感じている」
「自分たちで自分事とし過ぎずに、外の視点を入れていきたい」
「オープンセッションのゲストや会場を妄想していると楽しみで仕方がない」
そして。いざ、オープンセッション開催へ!
こうしてDay3に生まれ、この1月中旬までの時間をかけて、メンバー内で進化・変化してきた8つのプロジェクト。
1/16〜2/3の期間でオープンセッションを開催します。参加申込はこちらから。惹かれるプロジェクトがありましたら、ぜひお申込・ご参加ください!
文章:内 英理香
写真:東 信史