【京都をつなげる30人 1期 Day2】〜プロジェクトの種を育む。アイデアはじける2日目〜

シェア・送る

2019年11月12日@龍谷大学。

10/29に開催したDay1から2週間後のこの日、Day2のプログラムを開催しました。

Day1の最後に「チーム・個人で “自分事で起こしたい、京都でのイノベーション” をプロジェクト起案シートにまとめてくること」という課題が出され、この2週間の間にたくさんのプロジェクト案が提出されました。

Day2では、提出された各チーム・個人のプロジェクト起案シートをもとに、これから立案・実行に挑戦するプロジェクトの素案を、30人との対話を通して練り上げ磨いていきます。

 

オープニング

本プロジェクトのプロデューサー、野村 恭彦のお話から始まります。

野村
『前回は「問いを変え、多くの人を招き入れる」大切さをお伝えし、実際に取り組んでみて、とても苦労されたのではないかと思います。

多くの人にとって”自分事”となるような問いをつくる。妥協するのは簡単だけれども、こだわりたい。でもこだわりすぎるとまとまらない。企業・行政・NPO/市民といったクロスセクターで、どのように折り合いを付けていくのか?

よく互いの共通点を見つけていこうとされるけれども、実はそうすると大体丸まってしまって、せっかくクロスセクターの多様な人がいるのに、もとから知っていたようなアイデアになってしまうことが多いんです。

一番重要なことは、「お互いを活かし合う」スタンスを取ること。

例えば、行政の人が「どうやったらこの企業を儲けさせてあげられるか?」を考えたり、企業の人が「どうやったらうちのビジネスで、このNPOの事業を加速していくことができるか?」を考えてみる視点を持ってみる。

このように、お互いが「自分を使って相手を活かしていこう」とするようなスタンスで対話をしていくと、丸く収まることなくどんどん盛り上がってくるし、最終的に他人を活かしている人が一番成功しているのがイノベーションの面白いところです。

「なんとか自分のテーマに人を引き寄せよう!」と思いすぎずに、「あの人のテーマに自分のテーマを使ってもらおう」という風に発想してみると良いことが起こってきますので、今日はそんなスタンスでも取り組んでみてもらいたいと思います。』

 

プロジェクト起案シート リレープレゼン

04

「プロジェクト起案シート」は、なんと25件も集まりました。「つなげる30人」史上、過去最多です。

皆さんの「京都をつなげる30人」への真剣さに感動しながら、1件ずつ共有してもらいました。

前回Day1のチェックアウト(会の終わりの全員の一言ずつのコメント)では、「自分が本当にしたいことは何かを考えたい」「私の持っているリソースは何か、話していきたい」と口々に話していましたが、たった2週間の間に、自分と向き合ったり、自分の周りの方々とこのプロジェクトについて会話をしたり、想いを深く掘り下げてきてくれたことがひしひしと感じられるような、本当に一人ひとりの想いのこもった発表でした。

25ものプロジェクト起案シートがあるので、実は発表を聴きあうだけでも疲れるのではと心配もあったのですが、皆さんの熱い想いと、関西人らしくところどころに仕込まれた笑いのおかげで、真剣さと爆笑が混在したアッという間の時間になりました。

今回前に出ての発表を担当しなかったメンバーからもチェックインの言葉をもらって、Day2本格スタートの準備OK!

 

ワールド・カフェでゆるやかに対話をスタート

改めて、野村 恭彦から今回の対話のポイントを再確認。

野村
『「どんな風に互いを活かし合うか?」「どんな風に組み合わせていくか?」と考える視点として、大きく2つ挙げられます。

まず1つ目は、”企業の持つ儲ける力・仕組みを使って社会課題を解決しよう”という視点。例えば、阪急電鉄さん(※今回の参加者には、阪急電鉄からTauT(トート)阪急洛西口ご担当者さん、運輸部のご担当者さんもいらっしゃいます)のように、リソースを持っている会社は、良いプロジェクトであれば自分たちで稼ぐ力・マネタイズする力を持っている人たち。

このような会社には、稼ぎどころ(マネタイズする方法)の分からない社会的なプロジェクトが組み合わさると良いですね。阪急電鉄の後押しで、TauT(トート)阪急洛西口を使ってこの社会的プロジェクトが成功すれば、TauT(トート)阪急洛西口のビジネス全体も成功に近く。企業と社会プロジェクトがサポートし合うようなメージです。

2つ目は、”行政のロジックを作ることによって、行政の事業にしよう”という視点。子育てや教育というテーマのように、大事だけれども企業がビジネスとして動かすのは難しそうなプロジェクトは、社会的にどんなメリットがあるのかという行政ロジックをつくります。行政の事業として展開していく可能性を探るのも、クロスセクターだからこそあり得る大事な視点でしょう。

この後の対話では、一つひとつのプロジェクトをどう現実的に成り立たせるのか、この2つの視点も意識しながら、自分を開示しつつ相手を活かすようなスタンスで取り組んでもらえたらと思っています。

あともうひとつ、参考になるかもしれない話を。先日開催した「気仙沼をつなげる30人」の最終回で、ある参加者さんが話されて興味深かったのが「結局、地域で一番大事なのは活動量なのだ」という言葉です。

その方は空き家を集めて不動産業をしようとしていたのですが、とにかく町の中の活動量が重要なKPIなので、ただ空き家を借りてもらおうとするだけでなく、その空き家の活動量がどうやったら増やせるか?というコンセプトでプロジェクトを考えていました。

このように”地域にとって良い”というのを、経済面だけで見るのではなく、その地域に生まれる活動量を皆の1つの指標にするのも面白いのではないかと考えています。是非こんなことも考えながら対話をスタートしてみてください。』

 

このようなポイントを押さえつつ、ワールド・カフェ ×4ラウンドがスタート。お題は「京都30ならではのテーマを作ろう」です。

本当にまだ出会って2回目とは思えないほど、お互いに打ち解けた和やかな雰囲気。

「えー、もう時間?もっと話したいわー」と言いながら、次々とテーブルを回ります。

テーブルを移るごとにアイデアや視点を混ぜあわせ、プロジェクト同士の化学反応や接点を見つけていきます。

 

 

ブラッシュアップした案を発表

ワールド・カフェによって得られた新しい発想や気づきをもとに、昼食を挟んでプロジェクト内容をブラッシュアップし、再度全体に向けてシェア。

午前中に発表されたプロジェクト案から、コンセプトがより洗練されていったり、プロジェクト同士が融合していったり、より具体的な形が浮かび上がってきたり、より発想の幅が広がったりと、わずかな時間での対話でも目に見える進化が感じられます。

 

市民協働イノベーションエコシステム

ここで、野村 恭彦からこのあとの考え方として「市民協働イノベーションエコシステム」についてお話がありました。

野村
『この図の下の方の□と○は、 ”バリュープロポジションキャンパス” から借りたもので、○にユーザーのニーズを描き、□に企業が提供するサービスを描いて考えるビジネスフレームワークです。

ここでポイントになるのが、〇にユーザニーズではなく社会課題と書いてあるところです。通常、社会課題はいくら解決をしてもユーザー(社会課題の当事者)がお金を直接払わないので、ビジネスがシンプルには成り立ちません。

そこで、社会課題解決をビジネスやイノベーションの力で推進するために、この”市民協働イノベーションエコシステム”のフレームワークでは、上の△が登場します。

これは、「行政と市民が協働して、解決すべき社会課題を明らかにすること」と「行政と企業が協働して、ビジネスによる社会課題解決の条件を整えていくこと」の二つの市民協働によって、行政がイノベーションのリーダーシップを取っていくことを促しています。

地域には長期ビジョンがありますが、その長期ビジョンに合った形で市民が「この地域では、こういうことをやっていこうよ」と高いレベルで合意することを促し(※図内1)、企業がイノベーションを持って解決し(※図内2)、最終的にはそれを行政が政策にして加速させていく(※図内3)。

この〇と□と△が揃うと、これまで社会課題は行政が税金で解決すると考えていたところから、行政・市民・企業みんなで「こういうことを目指そうよ、こういうことをしていこうよ」と協働して全体がまとまっていくことが一番大事なんだと考えられるようになります。』

 

コレクティブ・インパクト

もう1つの重要な考え方、「コレクティブ・インパクト」についてもおさらいです。

野村
『今まで、色んな社会課題に対してみんなで一生懸命やっていても、全体として良くなったのかどうかよく分からず燃え尽きてしまうことが、社会課題解決をしている人たちにとっての大きな悩みだったんですよね。

その悩みに対して、ある社会課題に関してそれぞれがプロジェクト毎にバラバラに取り組むのではなく、「みんなでこういうビジョンを作って、こういう評価指標を作って、協力してやっていこうよ」と助け合うことによって、全体を良くしていくという考え方です。

Day2で出てきたプロジェクト案で言うと、教育や観光、リサイクルといったプロジェクトを、それぞれをただ立ち上げるのではなくて「全体として、この地域の教育全体がどう良くなっていくのか」をプロジェクトを超えて考える

例えば、自転車のシェアをもっと広げるという案がありますが、コレクティブインパクトの視点を入れると、「地域の移動の問題をどう改善するか」を考えることになります。そのためには、複数のシェアサイクル業者も連携しなければならないし、異なるモビリティが連携し合わなければならない。

「こうなっている状態」という測定可能な形に落とし込んでいき、自転車だけでなく駅やバスとも協力して取り組んでいく、というのがコレクティブ・インパクトの考え方です。

ここに挙がっているプロジェクトの1つとしてではなく、全体として「どういったインパクトを生み出せるのか?」「この30人以外の人たちともつながっていくと、どんなことを目指していけるのか?」ということも含めて考えて進めていくことが、市民協働イノベーションエコシステムを有効に機能させていく上でとても重要になります。』

 

怒涛の対話フェーズ

ここからは、対話を通した「市民協働イノベーションエコシステム」フレームワークの深堀、プロジェクト内容のブラッシュアップと、集中力を途切らせることなく突き進んでいきます。

プロジェクト内容のブラッシュアップができたら、各チームごとに5分間のブレインストーミング・セッションを企画して実施。30人から欲しいアイデアを定めて問いをつくり、ブレインストーミングを30人全員で行っていきます。

8チーム × アイデア10個 で80個のアイデアが、各チームに集まっていきました。どのチームにも30人全員の力を集めていきます。

これまで社会課題解決について「いかに良い解決方法を思いつくか」という風に思考を使っていたのが、

「他者が持っている種に対して、どんな面白いアイデアを膨らませていけるだろうか?」
「その案について私が提供できるリソースは何だろうか?」
「どんな人を招き入れたら、より加速するだろうか?」
「市民・行政・企業のどの得意領域を活かしていけるだろうか?」

と、今までとは全く違う回路で思考していくのが刺激的で面白く、対話による創造プロセスでそれを体験していく、まさに ”協働の価値” を実感する時間でした。

 

全体共有と、チェックアウト

そんな濃密な時間はアッと言う間に過ぎ去り、今日一日の成果を全体共有して、一人ひとりのチェックアウトとなりました。

「人生で初めて、本当に自分がやりたい!と思うことが出てきた」
「前回終了時のモヤモヤが晴れて、最後にどんなことが起こるのかワクワクしている」
「自分が出した案に、沢山の意見や反応をもらえたのが楽しく、とても嬉しい」

といった声に加えて、

「この会場に来るまでは、”これがやりたい”ということを考えてもなかなかしっくりくるものが思いつかなかったけれども、最初に野村さんからお話があった通り、”みんなを応援しよう”と考えて今日一日を過ごしてみると、すごく自分が活きてくる実感を得られた」

という声もあり、参加しているみなさん自身にとってもイノベーティブな1日・プロジェクトになっていることを、とても嬉しく感じました。

 

これから1か月後のDay3(12/17)に向けて、30人のみなさんには、それぞれの案をさらに磨き上げて来てもらいます。

この記事を読んで下さっているみなさまにも、「自分事として起こしたいイノベーションは何か?」を考えてみたり、周囲の方と対話してみたりしながら、次のDay3レポートを楽しみに過ごしていただけると嬉しいです。ひきつづきご期待ください!

 

 

文章:内 英理香
写真・動画:東 信史
グラフィックレコーディング:肥後 祐亮

シェア・送る