つなげる30人新聞

クロスセクターで模索した教育を変える道。「ナゴヤをつなげる30人」第1期メンバーが語る、対話からの気づき。

竹橋真悠さんのコピー

地域の未来に向けて、行政・企業・NPOなど多様なセクターから集った30名が、「つながり」を深めてまちづくりに携わる「つなげる30人」プロジェクト。

2016年に渋谷でスタートし、様々なエリアへと取り組みが広がっています。愛知県名古屋市では、市の主催で2019年度に第1期を実施。コロナ禍の2020年度も8月から第2期が進められているところです。

今回は「ナゴヤをつなげる30人」第1期のメンバーのひとり、名城大学社会連携センターの職員で、誰もが自由に使える共創空間 社会連携ゾーンshake(シェイク)の運営に携わる山本剛毅さんにお話を聞きました。

名古屋の共創空間のさきがけともいえる場をつくりあげてきた山本さん。「つなげる30人」への参加のきっかけや意図、第1期を通してどんな経験をし、今にどうつながっているのでしょう。

 

大学の共創空間からソーシャルインパクトを生み出す

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――まずは、山本さんが名城大学で運営に携わる社会連携ゾーンshakeについて教えていただけますか。

2015年、名城大学が名古屋ドーム前に新たにキャンパスを建てるにあたって、地域社会とつながるエリアを設けることになりました。「キャンパスから地域へ。キャンパスから世界へ。社会とつながるキャンパスに」。このコンセプトを具体化するための構想が進められ、企画段階からずっと関わり続けてきました。

2016年、社会連携ゾーンを「shake」と名付けて活動を開始。ワークショップや各種イベントなどで利用してもらえる設備を整えています。ここから社会課題に取り組むプロジェクトを創出するために、学内外のネットワークを築き、いろいろなチャレンジをしてきました。

例えば、19〜21時の時間帯に学外の社会人が対話の場づくりをしたり、カルチャーセンター的に学びの場を開いたり。年間300〜400の活動がshakeで実施される中で、学外の学びと学生をつなげることにも注力してきました。起業やスタートアップを志す学生とフォローする大人をマッチングするプログラムもあります。

 

――学生と地域社会のつながりを中心に、クロスセクターでのプロジェクト創出に取り組まれてきたんですね。「ナゴヤをつなげる30人」のメンバーとなったのはどんな経緯だったのでしょう。

shakeを開設して3年ほど経って、学生にとっても学外の人たちにとっても、つながりづくりや良質な場の提供に資する場に育っていきました。とはいえ、ここから「新たなコト」が生まれるのは、まだこれからかなとも感じていたんです。そんな時、ご縁あって「ナゴヤをつなげる30人」にお声がけをいただきました。

もともと「渋谷をつなげる30人」を知っていて。社会人が一枚目の名刺の肩書きで社会課題にアプローチする取り組みとして興味を持っていました。そのプログラムが名古屋へやってくるのは素直に嬉しかったですね。

会場としてのshakeの提供、メンバーのご紹介、そして、自分自身がメンバーにもなれて超ラッキーだと思いましたよ。自分たちの掲げたテーマから活動をおこしていくことにワクワクする性格でもあるので。

shakeにとってアップデートのチャンスにもしたかった。一緒に第1期に参加した同僚とも、「つなげる30人で生まれたプロジェクトに、学生や地域の人たちをつなげていこう」と当初から話していました。

 

 

教育長との対話から見えてきた学校教育の関わりしろ

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――山本さんは、第1期で「教育」をテーマにしたチームに参加してくださいました。渋谷でも学校教育を変える活動は一筋縄でいくものではなく、「なかなか難しいですよ」なんてこともお伝えしたのを覚えています。

そうでしたね。加生さんのおっしゃる通り、「教育をなんとかしたい」という話はビジネスコンテストでもよく提起されるテーマですが、学校に入って具体化していくのは簡単ではないこと。社会的な意義も大きいですが、事業化を目指すには収益化などのハードルもあります。

でも、そんなよく考えられて二の足を踏んでしまう枠組み以外のアプローチの仕方はないものかと考えていました。もちろん学校に入り込んで変化を生めばインパクトはありますが、学校教育以外の領域でできること、地道に汗をかく仕事で変えていけることもあるのではと。

 

――山本さんがそのように話してくださって、頼もしさを感じたのもよく覚えていますよ!チーム結成後、どのようにプロジェクトが深まっていったかお話いただけますか。

ヒントになったのは、メンバーのひとり、ミツカンの石井さんが紹介してくださったトワイライトスクールの取り組みでした。おじいちゃんおばあちゃんとお孫さんをつなげるために、ミツカンさん主導で放課後にお酢づくりのワークショップを開いている。社会貢献にもなり、自社の認知度アップにもなるグッドアクションですよね。

メンバーそれぞれが、広告業、金融業、魚の卸業など専門領域が異なったので、例えばトワイライトスクールに特色あるコンテンツを持ち込み、一社の取り組みを広げることもできそうだと考えました。

ただ、最初はプロジェクトの方向性が定まりきらず、アイデアが深まるきっかけになったのはオープンセッションでしたね。

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――元名古屋市教育長の杉崎さんをお招きしてのセッションでしたね。

そうです。ゲストがおひとりという変則的なセッションになりましたが、結果的にすごくいい場になったと思います。杉崎さんは、いかに時代に合わせた変化ができるかという柔軟な考え方をしながら、地に足のついた現実的な課題も踏まえて、今の学校のお話をしてくださいました。

教師の負担軽減、部活動のスリム化に向けて、地域の人材が顧問として関わる動きのお話も。部活動に企業が関わる道もあるかもしれない。現行の教育制度の隙間が見つかりました。

 

――「今の制度をどう変えるか」と考えていたのが、仕組みを変えなくてもやり方があると見出せたんですね。

学校教育が地域のサポートを求めているなら、民間主導で実践する道を考えようとなりました。

教育委員会はじめ行政に認められることがスタートではなく、自分たちで推し進めた事業を追認してもらう流れでもいい。未来をつくる学びの場づくりとして、今なにができるかを考える。杉崎さんから教育現場のリアルをお聞きし、それまでチームになかった視点が持てたことで、足並みや認識を揃えられました。

また、オープンセッション後には、名古屋市立八王子中学校元校長の上井靖さんとお話しする機会もいただき、学校でキャリア教育のコンテンツが必要とされている状況を知りました。

トワイライトスクール、部活動、キャリア教育など、優良なコンテンツを開発して学校に提供する。顧客体験価値を表す「カスタマーエクスペリエンス」ならぬ、子どもたちを中心においた顧客体験価値「チルドレンエクスペリエンス」を生み出していくことが私たちのチームのプロジェクトになりました。

 

 

共通のテーマで活動し続けられる人とのつながりが大きな財産

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――第1期のプログラム終了後、チームでの動きはありますか?

まだチームとしてプロトタイプを生み出すには至っていません。ですが、何度かミーティングを開き、各自の教育に関するコンテンツづくりも行われています。名城大学でも、第1期でできた上井さんとのご縁から、近隣の小学校のキャリア教育に関わる機会ができました。チーム内に限らず、つなげる30人でのコネクションから新しい動きは生まれていますよ。

同じテーマでなにかしたいと共感しあえる人たちとつながり、連携できる時には助け合う。そうした関係性はこれから先も長く財産になるものだと感じています。社会にインパクトを生み出す上で不可欠なソーシャルキャピタルを得られました。

 

――素晴らしいですね。「チームメンバーだけでプロジェクトを進めていかなければ」と考える方もいますが、決してそんなことはない。プログラムを通じてできたつながりを生かしていただけるのは嬉しいです。

第2期には、名城大学から社会連携センター以外の部署の職員にメンバーとして参加してもらえました。大学内でもつなげる30人との関わりは広がっています。第3期、第4期と名古屋で続いていくなら、私たちも継続してお手伝いしつつ、各プロジェクトの課題解決の実現を応援していきたいです。

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