「ナゴヤをつなげる30人」第2期の仕掛け人。人と人、人とまち、新しい接点から生まれる名古屋の未来へつながる変化

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竹橋真悠さん

地域の未来に向けて、企業・NPO・行政など多様なセクターから集った30名が、「つながり」を深めてまちづくりに携わる「つなげる30人」プロジェクト。

2016年に渋谷でスタートし、様々なエリアへと取り組みが広がっています。愛知県名古屋市もそのひとつ。2019年に第1期が実施され、2020年8月から第2期がスタートしました。

「ナゴヤをつなげる30人」の主催は名古屋市。行政によって仕掛けられるプロジェクトに第1期では参加メンバーとして、第2期では事業担当者として関わるのが、今回お話を聞いた竹橋真悠さん。

30人のひとりとして第1期で感じたこと、そんな経験も踏まえて運営に臨む第2期への思いなどをお聞きしました。入庁からの経験や学びも糧にしながら「つなげる30人」をまちにポジティブな変化をもたらすきっかけにしようと奮闘してくださっています。

 

地域のハブとして人と人とをつなげる

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――はじめに竹橋さんのご経歴をお聞きしてもいいですか?

はい、入庁して最初の配属は地域の土木事務所でした。公園や野球場の利用受付をしたり、道路パトロールをしたり、結構ガテン系の仕事をしていました。

次に異動したのは緑政土木局都市農業課でした。この頃、東日本大震災が起きて、農地復旧支援のために陸前高田市で4ヶ月を過ごす経験もしました。自らも被災者なのに地域のために働く公務員の姿。助け合いの姿勢など発災時に試されるまちの資質。今でも地域のあり方を考える時に思い出す、印象深いことが多かったです。

その後、同じ緑政土木局緑地利活用室で、都心の公園の活用を模索する社会実験の担当をしました。企業さんに寄附や協力をお願いしにいくこともありましたね。

そして、昨年度までいたのが北区役所地域力推進室。実はここでは、クロスセクターでまちづくりに取り組む事業に関わっていたんです。大学生、中高生、地元企業、区役所が一緒に北区の持続可能なまちづくりを考える「サステナまち計画」というプロジェクトでした。「ナゴヤをつなげる30人」の参加者に声をかけていただいたのも、この事業との関わりがあったからだと思います。

 

――公務員として働きながら、地域のつながりの大切さを感じる機会はあったということですね。

そうかもしれませんね。とはいえ、公園の社会実験や北区のまちづくりに関わった時には、立場の違う人たちをどうつなげるか、ずいぶん考えました。例えば、企業さんに社会貢献のための寄附や活動をどのようにお願いするか、地域課題にどう関わっていただくかとか。

いろいろな方と関わらせていただくうちに、「公務員って地域のハブのような存在なんだな」と考えるようにもなりました。まちで出会う人を深く知れば、「町内会のことならあの人、防災のことならあの人」と誰にお話をしたらいいかが分かってくる。

一方で、普段は企業で働いている人でも、PTAの活動に熱心な人も、消防団の中心人物だったりする人も。ひとりの人のいろんな顔を知っていると、その人と他の人をつなげる可能性が広がっていく。名古屋市のような規模の大きな都市でこそ、人と人とをつなぐアレンジャーとしての公務員の役割は大きいと感じています。

 

 

マイノリティな自分事が集まった先に、多くの人を巻き込む“問い”が見えた

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――そのように「地域のハブ」としての公務員の役目も意識される中で、「ナゴヤをつなげる30人」への参加の話がきた時はどう思われましたか?

純粋に面白そうだなと思いました。ちょうど北区で「サステナまち計画」に関わっていた時期でもあったので。その参考にもなるだろうし、企業やNPOの人とつながりができるのもプラスになるとポジティブに参加しました。

 

――竹橋さんは、第1期ではプロジェクトを提案するテーマオーナーにもなってくださいました。

そうですね。私は「認知症のことで何か取り組みたい」と発表しました。これは、自分自身に認知症の家族がいることから出てきたテーマで。職場やプライベートでもほとんど口にしない思いが自然と出てきたのは「つなげる30人」の場だったからかもしれません。

すると、「自分の親戚も認知症で困っている」とか「職場にも、働き盛りの世代で介護と向き合っている人、そこで悩みを抱えている人もいる」と共感する声をもらえて。悩んでいたのは自分だけじゃない、みんなの課題かもしれないと感じました。

 

――その竹橋さんの提案が、第1期のプロジェクトのひとつ「大人の学び場チーム」のもとになりましたね。

たまたま集まったメンバーが私と同じように、それぞれの生活の中で感じている悩みや課題について取り組みたいと思っていました。自分たちと同世代の働き盛り世代が、互いに応援したり、共有したり、聞いてあげる、そんな「場所」が必要だと考え、できたチームが「大人の学び場」でした。一人ひとりモヤモヤと抱えているものがあって、そんなマイノリティが集まったら、みんなが必要とするプラットフォームが見えてきたという感じです。

「つなげる30人」に参加する人は、最初は所属する組織の一員としてやってきます。でも段々と、組織の理屈だけでなく、ふたをしてきた自分の思いが見えてくる瞬間がある。「それはどうしても関わりたい!」と自分事にできるアイデアや課題が見つかって言葉にできると、周りの人との距離もグッと近づくんじゃないかな。そうして、主体的な意志を持った上で、ひとりよがりではない他者と共有できる問いをチームの仲間と試行錯誤していく。こんなプロセスの先に、多くの人を巻き込めるプロジェクトが生まれると思います。

問いを立てるのは簡単ではないですけどね。オープンセッションでたくさんのステークホルダーの方と一緒に考えられましたが、「もっと考えを深めていける問いもあったのかな」と今も思っています。100点満点の答えはなかなかない中で、チームのメンバーとも、あれこれいろんな話をしました。学生時代の部活動の仲間みたい。そんなつながりができたのも嬉しいです。

 

――第1期が終わった後、チームの動きはありますか?

今でもメンバー同士のつながりは続いていますよ。活動としては、大学職員のメンバーが、大学主催で大人が興味のあることを学べるオンラインセミナーを開いたり、地域振興課では地域の方が語り合える場づくりを考えていたり。プロジェクトで出された発想が、いろいろな形になっていますよ。

 

――半年でプロジェクトを完成されるのが「つなげる30人」ではないので。築いた人脈などのリソースを生かしながら、自組織をやりたいことのために使ってくださる人たちがいるのは素晴らしいなと思います。

 

 

名古屋の未来へつながる新たな接点をたくさん生み出す

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――さて、第2期を迎えるにあたり、ご自身が担当者として関わることになったわけですが。

部署の異動も含めて「ありえるかな」とは思っていましたが、まさかその通りになるとは。ミラクルですよね(笑)

第1期に参加したおかげで、自分なりに感じた改善点なども加生さんにご提案できて、一緒に場をつくらせていただけるのが楽しいです。

 

――第2期もDay2までを終えました。中盤以降に向けて思いを聞かせてもらえますか。

それぞれに魅力的で、やる気にあふれた人が集まってくださいました。
みなさんには、名古屋への愛を込めて、名古屋の未来へとつながる大きな夢を描いてもらいたいです。

人と人、まちと人との新たな接点が、たくさんの良い変化のきっかけになると思います。

例えば、行政から参加している若手の職員は、企業の人と接して多くの刺激を受けるでしょう。成果を残すためにバリバリと動いている人のノウハウ、若くして組織を経営する立場にいる人の目線。そこから市役所を動かすためのヒントを得てほしい。

一方で、地域のコミュニティとはほとんど関わりがなく、まちの課題について初めて考える人もいます。そんな人たちが、まちに関心をもち、結びつきをつくる機会にもなってほしい。「つなげる30人」で出された発想を生かし、市内各地域のリアルな課題にもフォーカスしていく仕組みをつくれたらと考えています。

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