POTLUCK代表・谷合さんが語る、コロナ禍の今「つなげる30人」にスタートアップが参加する意味

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POTLUCK 谷合さん

「つなげる30人」プロジェクトは、地域の未来に向けて企業・行政・NPO市民30名が参加し、「つながり」を深めながら進めるまちづくりプロジェクトです。

2016年にスタートした「渋谷をつなげる30人」は現在5期のメンバーを募集中。
今期から通常の企業枠とは別に「スタートアップ枠」が設けられ、創業初期の法人でも参加しやすい環境になっています。

2019年開催の「渋谷をつなげる30人」4期に、スタートアップとして参加されたのが谷合 竜馬(たにあい りょうま)さんです。
谷合さんは2017年に株式会社RYM&CO.を設立し、翌2018年に月額定額制ランチテイクアウトサービス「POTLUCK(ポットラック)」をリリースしています。

今回は、スタートアップならではの視点やプロジェクトとの関わり方、今後の展望についてお話を伺いました。

《聞き手=長田 涼、加生 健太朗》

 

体温が感じられる温かな関係性を作りたい。家入さんに背中を押してもらい起業を決意

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ーーまずは谷合さんが起業をしようと思った背景について聞かせてください

いくつかあるのですが、1つは僕の父親が会社をやっていたので、サラリーマンという生き方よりは起業や経営をしてみたかったことがあります。

あとそもそも飲食業界に興味があったんですね。
僕は東京出身で、故郷がないことへのコンプレックスみたいなものがあり、「居場所づくり」や「居場所探し」が自分の中で1つのテーマになっていたんです。

また僕は以前カラオケ屋の店長をやっていたのですが、その経験からリピートしてもらったり、ファンになってもらったりすることがすごく大事だと感じていました。

今の時代はサービスでの差別化が限られてくるので、体温が感じられる温かな関係性をつくること、それがお店を続けていくうえで大事なことになってきていると思うんです。

これらを実現したくて、POTLUCKというサービスを立ち上げました。

 

ーー具体的にPOTLUCKのサービスをやろうと思ったきっかけはありますか?

僕はPOTLUCKをやる前に、クラウドファンディングのCAMPFIRE(キャンプファイヤー)というところで働いていたんです。そこで働きながら「自分でどのような事業をやろうか」と考えていたんですね。

ちょうどその当時、アメリカのニューヨークで「サブスク×テイクアウト」のようなビジネスモデルが出てきたのを知りました。それを知って「日本でもチャレンジしてみたい」と思い、CAMPFIRE代表の家入さんに伝えてみたんです。

家入さんからは「谷合くんなら向いていると思う。スタートアップは孤独だし大変だけど、覚悟があるんだったらやってみたらいいよ」と背中を押していただけました。

 

 

スタートアップ枠で参加するも、最初は少しだけ温度差を感じた


ーー「渋谷をつなげる30人」はどのような形で知ったのですか?

僕が「渋谷をつなげる30人」を知ったのはNPOのETIC.(エティック)で業務委託を受けていたときでした。

「こういうプログラムが始まるみたいだよ」と聞き、コンセプトなどを含めて参考になるなと思っていたんですね。
その後に知人が「渋谷をつなげる30人」のことをシェアしていたのを見て、僕が「興味あります!」とコメントし、そこからディレクターの加生さんとつなげてもらったのが最初だったと思います。

僕がこの取り組みに興味を持ったのは、うちのサービスの特性上、地域やローカル感がとても重要になってくるからです。
特に渋谷を中心としたサービスなので「渋谷をつなげる30人」でのつながりは、事業的にも大切になるんじゃないかと思いました。

 

ーースタートアップとして参加された当初、他の参加者との違いを感じた部分はありますか?

僕は初日に少し遅れてしまい、着いたときはちょうど皆さんが名刺交換をされているところだったんですね。僕がスタートアップ出身だからかもしれないですが、なんだか場違いなところにきてしまったなという印象でした(笑)。
でもセッションが始まったあとは同世代の人たちもいて、それほど違和感は感じませんでした。

あと正直に言うと、大きな企業から参加されている方の中には、会社から言われて来ているからなのか、やや受け身な印象の方もいらっしゃいました。

僕のコミュニケーション力不足もあったと思うのですが、もう少し事業に関係した具体的な話や、提携の話を進められると良かったなと思いますね。

 

 

「渋谷をつなげる30人」に参加して良かったことは ”ローカルなつながり” が得られたこと

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ーー参加してみて良かった点はどこですか?

ローカルなつながりが得られたことですね。

たとえば、渋谷道玄坂青年会の大西さん。
渋谷は常に色んなことを仕掛けていると思うんですけど、それを地域の方々としっかり連携されていることがわかりました。その取り組み方がすごいと思いましたし、そうやって渋谷で長く活躍されている方とつながれたのは大きかったと思います。

またNPO法人「代官山ひまわり」の藤田さんは、渋谷のお母さんたちをつなぐ取り組みを
されています。それまで僕はそういった取り組みがあることすら知りませんでしたし、そういった新たなつながりが広がったことがうれしかったです。

 

ーープロジェクトが終わった後も交流が続いている方はいらっしゃいますか?

それで言うと、恵比寿新聞の高橋さんですね。
高橋さんとはもともと知り合いだったのですが、プロジェクトを通じてあらためて交流を持つ機会を得ました。

プロジェクトが終わった後、コロナで飲食店が大変なことになっていることは聞いていたんです。でもそのタイミングでこちらから声をかけるのも、逆に高橋さんに迷惑をかけてしまうかなと思って何もできずにいたんですよ。

でも6月に久しぶりに高橋さんから「飲もうよ」と誘っていただいて。
その席の中で「(コロナ禍の早い段階で)谷合くんから声をかけてくれたら、もっと一緒にできることがあったのに」とおっしゃっていただいたんです。

そこから「僕たちが高橋さんの取り組みに関わることで、何かお役に立てることはないんだろうか」と真剣に考えるようになりました。
そして今回、高橋さんに弊社の顧問に入っていただき、これから新しい取り組みを一緒にさせていただくことになったんです。

 

 

コロナ禍で狙っていたオフィスランチ需要が立ち消えに。ピンチを前向きに捉え、ソーシャルな課題に向き合う

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ーーコロナで飲食店が大変な状況になり、その中で谷合さんはどんなことを考えていましたか?

僕たちはオフィスランチの需要を狙っていたのですが、4月、5月時点ではそれがほぼ消えてしまい、飲食店自体も多くが休業を余儀なくされる状況でした。

「自分たちのビジネスはこれからどうなるんだろう?」と思う一方で、飲食店さんからの問い合わせは増えていたんですね。なので「コロナが落ち着いた後にはまた流れがやってくるのではないか」とも思っていました。

僕は、事業としては波があった方が良いと思っているんですね。
波の無い、いわゆる「凪状態」では、なかなか新たなビジネスを仕掛けるチャンスが生まれにくいです。なので、波が来ていること自体は前向きに捉えていました。

 

ーーコロナ禍を経た今、ソーシャルベンチャーはこれからどうなっていくと思いますか?

今の時代、スタートアップの事業軸を見つけるには、ソーシャルの課題解決に依る必要があると思います。
実際に僕の周りの起業家を見ていても、そのような事業軸のスタートアップが多いです。

ソーシャルに向き合わないとそもそもサービスとして広がりにくいですし、誰かの課題を解決すること、自分たちで課題創造していくことはビジネスの本質ではないでしょうか。

 

 

「渋谷をつなげる30人」に参加して良かったことは ”ローカルなつながり” が得られたこと


ーー実際に地域とつながることで、それがサービスに活かされたことはありましたか?

ビジネスを考えるうえで「困っている人」の声をキャッチアップできるようになったのは大きかったです。

具体的な課題を認識できたことで、そこに対して「自分たちが今まで育んできたアセット(資産)をどうすれば課題解決に使えるか」と考えることができるようになりました。

 

ーー千駄ヶ谷大通り商店街振興組合の岡崎理事が「『こんな若い人が飲食店のためにがんばっているのに我々は何もチャレンジしなくていいのか』という声が仲間内から出てきてとてもうれしかった」とおっしゃっていました

とてもありがたいですね。
僕たちがやっていることはもちろん自分たちのためでもあるんですけれど、何よりも地域の飲食店さんにちゃんと営業を継続していただくためなんです。

僕自身、POTLUCKのサービスに入ってもらうことがゴールだとは考えていなくて、個々のお店にとって本当に良い選択ができることが何よりも大事だと思っているんですね。

どんな飲食店でも、きっと誰かの居場所になっています。

こういう状況だけど、だからこそあきらめないでその誰かの居場所を守り続けてほしい。
僕たちはそういう思いで、飲食店を応援したいと思っています。

 

 

取り組みの重要性を見極め、ファストイノベーションとスローイノベーションのバランスをうまく取る

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ーーファストイノベーションとスローイノベーションの両立は難しいと思うのですが、谷合さんはその辺りのバランスをうまく取られているように思います。何か意識していることがあるのでしょうか。

自分はある意味で中途半端なのかもしれないですけど、もともと事業を急いで大きくしたり、売ること自体が目的だったり、ということは考えていないんですね。
それよりも、サービスや会社が何を解決しているのか、社会に対してどんな影響を与えているか、そちらの方が重要だと思うんです。

僕たちであれば、お店に対してどう向き合えるか、というところが1番大切。
もちろん今やっているサービスは、スケールアップやシェア獲得など、ファストイノベーション的な部分も大事なのは事実です。

その一方で、これまで育んできた飲食店さんとのつながりや「渋谷をつなげる30人」でのつながりがあるから、新たな課題に対してスローイノベーション的なやり方でアプローチできるかもしれない、とも思っています。

小さく深くだけだとできない部分もあるし、広く浅くだけもやっぱり良くない。
僕としてはファストイノベーションとスローイノベーション、両方を選んでいけるといいと思いますね。

 

ーー「地域課題を解決したい」と考える、これからのスタートアップメンバーに対してアドバイスがあればお願いします。

スタートアップも色々なフェーズがあると思うのですが、初期フェーズからローカルとのつながりを作れるといいと思いますね。

スタートアップで1番大変なのは「実験したいけどできない」という点だと思うんですよ。
それが地域のつながりを通して「うちでやっていいよ」「できる部署を紹介するよ」という話になれば、これほど助かることはありません。
それに小エリアで成功事例をしっかりと作っておけば、他のエリアで展開できる可能性も十分あると思いますね。

今回のコロナにおける市場変化のように、後々意外なところでつながる可能性や、そこでのつながりが大きな助けになることもあります。

なので焦って連携や提携をしようとするよりは、まずはゆるくつながりをつくるという視点が良いのではないでしょうか。
「つなげる30人」のつながりはあくまできっかけとして捉え、そこから自分で少しずつアクションを起こしていくのがいいと思います。

 

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谷合 竜馬
株式会社RYM&CO. CEO/代表取締役
1988年東京都出身。大学卒業後、カラオケ店の店舗責任者や、出版社の媒体PRとして勤務。2015年から、NPO法人ETIC.が運営する社会起業家支援プログラム”SUSANOO”にて、第2期事務局及びプログラム企画設計、第3期コーディネーターを担当。2016年7月から、フリーのディレクター/プランナーとして活動。2016年の熊本の震災以降、熊本の復興支援プロジェクト”Bridge KUMAMOTO”にてサポートメンバーとして2017年10月まで参画。2017年4月よりクラウドファンディングサービス”CAMPFIRE”にて事業開発部に所属。2017年11月にて、会社を登記し、株式会社RYM&CO.(リムアンドカンパニー)にて、月額定額制テイクアウト予約サービス「POTLUCK」を主宰。
https://www.pot-luck.jp/

 

《文=長濱 裕作》



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