つなげる30人新聞

「スタートアップと地域をつなぎ、スローとファストの両立を」エバンジェリスト 日比谷尚武さん

エバンジェリスト 日比谷尚武

つなげる30人プロジェクトの魅力と現実をお届けするために、プロジェクトマネージャーの加生健太郎が関係者やメンバーの心境を丸裸にするインタビュー企画第一弾!

今回は、エバンジェリストとして関わっていただいている日比谷尚武さんに、インタビューをお願いしました。

コネクタとして、様々な企業の広報・PRで大活躍している中、なぜ「渋谷をつなげる30人」に関わっているのか?そこにある本音を伺ってみます。

 

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日比谷 尚武
Project30 エバンジェリスト
「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす」をテーマに、セクターを横断するコネクタとして活動。広報、マーケティング、新規事業、コミュニティ、トライセクター関連を中心に活動。一般社団法人at Will Work理事、一般社団法人Public Meets Innovation理事、Project30(渋谷をつなげる30人)エバンジェリスト、公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長、ロックバーshhGarage主催、他。

 

「渋谷をつなげる30人」との出会い

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※zoomでのオンラインインタビューで実施しました

 

ー僕と日比谷さんの出会いが、「渋谷をつなげる30人」との出会いになりますよね

日比谷さん
共通の友人が主催していた交流イベントで、加生さんと出会いましたね。実はそれ以前から「渋谷をつなげる30人」の名前は聞いたことがありました。

当時、”渋谷ズンチャカ”という取り組みに関わっていたのですが、そのメンバー経由で「渋谷を盛り上げていくプロジェクトがあるらしい!」と耳にしていたんです。

その前提だったので、加生さんと出会ったときは「あっ、この人が例のプロジェクトをやっている人か!」と、興味を持ったんですよ。

 

ーその時は、Sansanを辞めた後でした?

日比谷さん
辞めた直後になりますね。僕にとってSansanを辞めたことは大きな出来事。もっとパブリックセクターとの繋がりを増やしていきたいと思って、会社を離れることにしました。

なので、様々な場所に足を運んで、行政や自治体との関わりをつくっていたんです。とにかく、彼らの仕事内容や仕事に対する想いを聞き歩いていました。

※パブリックセクター・・・官庁、独立行政法人、国立大学法人、地方自治体、公益法人、学校法人などの公的機関のこと

 

ーなぜパブリックセクターに注目していたんですか?

日比谷さん
僕は10年ほど広報の世界で活動しています。広報というのは”パブリックリレーションズ”、ただメディアに出して終わりではなく、様々なステークホルダーと関係を作っていくのが生業です。

そうなると、行政や地域などともリレーションを築いていかないといけません。ただ、僕がよくやり取りしていたのはスタートアップ企業で、彼らはお客様やメディアとのリレーションは築けるけど、それ以外が全然できていないのが現状でした。

でも、どこかで地域や行政との関わりが必要になってくるタイミングがあります。となったときに、「僕自身が行政や地域のことをもっと知らないといけないな」と思ったのが興味を持ったきっかけですね。

 

ーそういう心境のときに出会ったのが、「渋谷をつなげる30人」ということですね。その前から渋谷区では活動されていたんですか?

日比谷さん
生まれ育ちともに渋谷区の恵比寿なんです。ただ、地域活動とは距離感を置いていたんですよね。

母親が町内会の会長をしているのですが、ネガティブな話も耳に入ってきたりしまして。僕としては、目先の細かな揉め事よりも、もっと力を注ぎたいものがあった。

そんな考えでいながらも、たまたま”渋谷ズンチャカ”を手伝ってみたり、パブリックセクターの方の話を聞いたりする中で、「渋谷というフィールドは、スタートアップとパブリックの接続目線で見たときにとても魅力的な場なんじゃないか?」と気がついたんです。

 

ー活動を通じて視点や考え方が変わってきたんですね。

日比谷さん
そうですね。渋谷でBAR経営もしているんですけど、始めたのもちょうどその頃でした。

町内会活動やPTAの一環として地域に関わるよりも、”渋谷ズンチャカ”やBARみたいなスタイルで地域と関わるのなら、より幅広い人が喜んでくれるし、僕自身も楽しめるし、とてもいい関わり方じゃないかと。

その心境の変化もあって、より「渋谷をつなげる30人」への興味も大きくなっていきました。

 

 

地域にも通じる「弱いつながり理論」

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ー最初「渋谷をつなげる30人」の現場を見られて、どんな印象でしたか?

日比谷さん
「よくあるワークショップ」を想像してたんですけど、イメージよりも参加していた企業・人の熱量が高くて驚きましたね。

当時、他で開催されていたオープンイノベーションイベントについて、あまりポジティブな印象を持っていませんでした。大企業のおじさんたちが会社の外に出てはしゃいでいる絵をよく見かけていて、それが”遊び”っぽく感じたからです。

それと比べて「渋谷をつなげる30人」の参加者の熱量の高さや、運営が本気でオープンイノベーションをやろうとしているんだな、という気概を強く感じました

 

ー2期のタイミングで、当時日比谷さんが理事を務めていた一般社団法人at Will Work からメンバーの一人が渋谷をつなげる30人」に参加されましたがなぜその流れに?

日比谷さん
あのときにそうした理由は2つありました。ひとつは僕個人の打算。もうひとつは団体のプロモーションです。

個人的な打算というのは、「渋谷をつなげる30人」は聞いてる限りおもしろいけど、外から見ても仕組みや魅力を深く知ることはできなかったので、関係者として中に入りたかった。

ただ、いきなり僕自身が入って手伝うよりも、別の方に参加してもらって関係性を築いた方がいいなぁと思ったので、この関わり方を選びました。

また、団体としては「働き方を選択できる社会つくり」というテーマで活動していましたが、当時は「働き方改革」という言葉も浸透しておらず、まだ取り組みの認知度が低かった。僕らとしては、社会参画に意識の高い企業や個人の方々に少しでも知ってもらいたかったので、良い機会だと思ったんです。

 

ー参加したメンバーの方に、責任者として期待していたことへのギャップはありましたか?

日比谷さん
理事として期待していたのは「団体のことをアピールしてほしい・スポンサーを見つけてきてほしい・コラボ企画を生み出してほしい」ということでした。

ただ、「やってみないとどうなるかわからないなぁ」と思っていましたね。メンバーのキャラも考えて、何からのゴールを定義した方が良いだろうと考えてミッションは渡したものの、遊び(余白)の重要性も感じていたので、「思いっきりやってほしい!」という気持ちで送り出しました。

正直、「もっと団体の話をしてくれよ」とか「もうちょっと頑張って営業してくれよ」とか思っていた時はありました。でも、彼女自身の成長を感じたり、会社では見られない立ち回りを現場で見られて、本人にとって「渋谷をつなげる30人」という空間が”サードプレイス”として機能していることを感じられました。

同時に感じた課題感は、そういう見方ができたのは僕だけだったので、他の団体の人間に対してフォローしていく必要があるなということ。「なんで、勤務時間にあんなことしてるんですか?」という声は挙がるだろうし、、ちゃんと組織内理解を得ないといけないなと感じましたね。

 

ー当時はまだ運営もまだ試行錯誤の段階でしたからね。もともとはパブリックセクターを求めて関わってきたと思うんですけど、そこに繋がっている感覚はありますか?

日比谷さん
僕自身が行政に持っていくタマ(具体的に相談したり、提案したいこと)を持っている訳ではありません。なので、ゆるやかにリレーションをつくって「いざ(スタートアップと行政をつなぐ必要が発生したら)という時に動けるようにしておこう」というスタンスです。

だからこそガツガツせずに臨めていいのかもしれないし、渋谷を”好きな場所”として向き合っていけるようになっている。「渋谷をつなげる30人」をひとつのモデルケースとして観察させてもらっていることは、とても貴重な経験だなぁと思っています。

 

ーゆるふわロビイリストなんですね

日比谷さん
これは僕自身のコミュニケーションのやり方も影響していると思うんですけど、どんどん前に出たり、トップに躍り出ようとするのが性に合わない。コツコツ人間関係を築いたり、知見や感覚を積み重ねないと落ち着かないんですよ。

 

ーその価値観って、とても「つなげる30人」的な価値観ですね。

日比谷さん
なるほど。もしかしたら、感覚的に合致していたのかもしれませんね。

別の言い方をすると「弱いつながり理論」だなと。”つながり”に対して早急に成果を求めたり、身近なつながりを仕事に活かさなきゃと焦ったりするのではなく、ゆるりとつながっていた関係性が、とあるタイミングで価値を発揮するというものです。

「弱いつながり理論」はビジネスのシーンで使われることが多いですけど、まちづくりの文脈でも変わらないなぁと感じますね。

 

ー昨年は関わりはじめてから3年目に入り、本格的にいっしょに活動していきましょう!となりました。例えば、ForbesJapanさんでの連載機会をつくってくれるなど、発信の面で活躍していましたが、自身でどのような変化があったのでしょうか?

日比谷さん
「渋谷をつなげる30人」の理解が、3年目になってやっとできたなぁと思います。責任持って関わると変わってくるものはありますし、3期ではほとんどのセッションに参加できました。それでやっと見えたものがありましたね。なので、前よりも自信を持って語ることができるようになってきたし、メディアへの紹介もできるようになってきた感じです。

さらに4年目になってから、「自分ごととして語ろう」という意識が芽生えました。外部でのイベントでプレゼンする際に「渋谷をつなげる30人」のことを話したり、肩書きを入れてみたり。

自分とともに、渋谷をつなげる30人のプロジェクトが成熟してきたなぁと感じられたからこそ、「外に出して大丈夫だ」という自信が持てました。

 

 

スタートアップにもスローの価値を

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ー2019年になると、業務内容に加わったのが「スタートアップとの連携」でした。

日比谷さん
その項目を入れさせてもらったのは、さっき話した「人に話していこう」という意識が生まれたからです。

自分のやりたいことを入れ込み、意思と意図を持つことで、責任を持って取り組めると思ったんです。お客さんやお手伝い、見学じゃない関わり方がしたかった。

 

ー「スタートアップと地域のつながりによる、事業創造の可能性」が2019年の僕と日比谷さんのテーマでしたもんね。

日比谷さん
POTLUCKの谷合さんはまさにそうですよね。コロナの状況を受けてからの彼の行動を見ていると、火がついた感じがしました。

※POTLUCKの取り組みについてはこちら

街のひととフラットにつながることで、ベンチャー特有の尖った感じが柔らかくなり、可愛がられていったような気がします。本人も「このようにつながりを構築することで、いざという時に活きてくるんだ」と、感じているのではないでしょうか。

これは「スタートアップと地域のつながり」のひとつの好例と言えるかもしれませんね。

ただ、スタートアップ界隈での商談のような「おもしろい!今すぐやりましょう!」のような展開にはならないので、ここのバランスはもっと考えていきたいなぁとは思います。

 

ーそうですね。スタートアップはいわゆるスピード重視。キャッシュフローを回し続けるのが重要事項です。それに対して、地域のスピード感はかなりゆっくり。谷合さんもはじめは「こんなにゆっくりはできない」と言ってましたけど、最近彼はゆっくりであることの価値をわかってきたように思います。スローとファストの両立ができるスタートアップがどれほど生んでいけるのか?が大事な視点になっていきそうですね。

日比谷さん
僕のコネクタという役割も、スタートアップの中では必須なものではありません。広報も同じで、リレーションマネジメントはマストではない。もちろん悪いことではないんですが、なくてもなんとかなってしまうんです。

ただ、ジャンプアップ(非連続な成長)するために必要なものなので、やる価値はあります。遠回りだけど、スローなことに着手することで生まれる価値を理解している人が増えたら良いなぁと思いますね。

 

ー今後どんな企業が「つなげる30人」に参加するといいと思いますか?

日比谷さん
”オープンイノベーション疲れ”をしている企業は、ぜひチャレンジしてほしいと思います。ただ、やるからには不純な動機ではなく「オープンイノベーションって素晴らしいからやろうぜ!」みたいなピュアな動機であってほしいですね。

成果を期待してやるというよりも、取り組みそのものの価値を理解してやる企業が増えると嬉しいです。

 

ーオープンイノベーション疲れ?

日比谷さん
企業の多くは、「自分たちでは新しい変化ができないので、外部の力や刺激を借りてチャンスをつくろう!」とオープンイノベーションに着手していきます。

だけど、その気持ちでスタートしちゃうと他力本願になってしまう。すると、取り組みを進めていっても結局うまくいかずに疲弊していく。これが僕の考えるオープンイノベーション疲れですね。

 

ーなるほど。その点、つなげる30人は疲れにくいということですか?

日比谷さん
終わった後の徒労感はあんまりないですよね。1年間がっつりプロジェクトと向き合うので担当者の体力は使うと思いますけど…西洋医学と漢方の違いみたいなイメージです。

 

ー西洋医学と漢方の違い?

日比谷さん
つなげる30人は根本的に足腰を鍛えられるんです。つなげて何かを生み出すことができる人材が、組織に帰っていくことになるので。

 

ーこれまでのオープンイノベーションは、ファスト的なニュアンスが正解だと捉えれてられてきてクイックなマッチングをやってきたけど、金の切れ目が縁の切れ目にならないセクターとの豊かなつながりが長生きするには大事じゃないか?ということですね

日比谷さん
そうです。谷合さんや恵比寿新聞さんの時もそうだけど、何かしらの意志で行動していたり、これまで関係を積み重ねてきたりしたひとたちが、いざという時にスパッと動けたわけじゃないですか。

※恵比寿新聞の取り組みについてはこちら

このタイミングで、企画書を持っていって一から信頼を築こうとするフェーズだとそうはいかなかった。土台の関係性がとても活きているんですよね。

 

ー最後に、つなげる30人メンバーへのメッセージはありますか?

日比谷さん
せっかくつながりがあっても、なかなか一歩を踏み出せないひとはいると思うんです。こんだけOBがいるのに、動けなかったことを後悔しているひとはたくさんいると思う。

今回のコロナでアクションに移せた人が、他のつなげる30人メンバーに対して「動いていこう!」と声をかけていく立場になって、動く人がまた増えて、、みたいな連鎖が生まれていくといいなぁと思っています。

ここに集まるメンバーが、オープンイノベーションの代表的なロールモデルになっていくことを楽しみにしています!

 

文章:長田涼



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