名古屋を“夢があふれるまち”に。DREAM QUEST NAGOYA。

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「あなたの夢はなんですか?」

夢を叶えようとがんばっている人。自分の夢の話を聞いて欲しい人。夢を探している人。夢を語るってちょっと気恥ずかしく思う人。

みなさんは、どのように答えますか。“夢”という言葉になにを感じるでしょう。

「ナゴヤをつなげる30人」第2期から、「DREAM QUEST NAGOYA」というプロジェクトが誕生しました。通称「ドリクエ」。

夢は人に幸せやエネルギーを与え、社会に新たな可能性を創出するもの。みんなが夢を抱き、語り、叶えるために前進できる。「夢のあふれるまち ナゴヤ」を目指す取り組みを展開しています。

2021年6月には、これから就職活動に臨む大学生と大人たちが語り合うオンラインでの「ドリクエ」を企画。目前の企業選びや内定獲得を目的としたセミナーではなく、学生と社会人が一緒に理想の人生について考える場を継続的に開催しています。若者は長期的な目で人生の夢やキャリアを見つめ、大人たちは語らいを通して今の自分の夢を顧みる。

つなげる30人でのプロジェクト立ち上げからこうした場づくりがスタートするまでの経緯や、プロジェクトに携わるメンバーのみなさんの思いを聞きました。お話ししてくださったのは、DREAM QUEST NAGOYAの間瀬さん、奥野さん、内藤さん、大谷さんの4人です。

「マイナスを解決する」より「プラスを実現する」プロジェクト

――ドリクエを、「ナゴヤをつなげる30人」第2期で提案したのは間瀬さんでした。このプロジェクトを考えた最初の思いを聞かせてください。

間瀬 
提案をさせてもらったのは、ちょうど新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出て、みんな突然外出もできなくなった時期でした。強い閉塞感が社会全体に広がっていた。やはり新しくチャレンジしようとする人も減ってしまい。挑戦ができない、停滞した世の中の空気感にモヤモヤを抱いていました。

他方で、起業や協創を目指してプロジェクトを打ち出す際に、「社会課題の解決」ばかりがメインになりがちな風潮にも、少し違和感を感じていたんです。課題解決はもちろん大切ですが、マイナスの解消とは異なる、新たなプラスを生む方向性も模索したい。では、私たちがプラスを生むために、社会を前進させるためになにが必要なのか。ふと浮かんだのは“夢”というキーワードでした。

ちょうど「ナゴヤをつなげる30人」のDay1で市長が語っていた私たちへのメッセージに「City of Dream」というキーワードがあって。Day3でプロジェクトを提案しようと考えた時に、あれこれと頭の中にあった思いがつながり、“夢”をテーマにしようと決めました。

――間瀬さんの提案を受けて、チームに参加されたみなさんはどんな思いだったのでしょう?

奥野
とてもポジティブなテーマで、素直に共感できました。自分の周りをみても、「夢が持てない」「仕事が楽しめない」という声は少なくないように感じます。夢を持つことで人生に前向きになれる人を増やせるかもしれないと考えて、このチームに参加しました。

大谷
自分自身、日常生活で“夢”を意識する機会は少ないです。ただ、夢の力はとても大きなもので、周りの人にも影響を与えると感じています。大人になっても夢を持って活動する人は素敵ですし。面白いテーマだと心惹かれました。

内藤
普段は大学で教員として勤めており、スポーツとまちづくりを専門に研究しています。そもそも、ワークショップなどでは取り回す側になる機会が多いので、せっかく参加者として意見をどんどん言えるこの場を存分に楽しみたいと思っていました。

魅力的なテーマの提案が多かった中でも、間瀬さんの夢を通じて社会にプラスを生むという発想に私もワクワクを感じられた。課題をもとに政策を考える仕事には日常的に関わっているので、いつもと違う人たちと活動を起こすなら、いつもと違う方向性と内容のものを選ぼうと思ったんです。

間瀬
この段階では具体的なアイデアはほとんどありませんでした。それでも、夢をテーマにしたいという考えにみなさんが共感してくださったのはすごく嬉しかったですね。

大学生とつながり見出した「夢就活」の取り組み。

――チーム結成後、プロジェクトの内容はどのように固まっていったのですか?

間瀬
誰でも夢を語れるイベントを実施しよう。メンバーの所属する企業と連携してキャンペーンを打とう。アイデアは色々と出てきました。ただ、実現までの道のりを遠く感じるものも多くて。最初にどんな取り組みを仕掛けていくか、なかなかひとつに定まりませんでした。

そんな中で、「企業の採用で“夢”が軸になるといいよね」という声があって、これから社会へ出る若者たちの声に注目してみることに。Day4のオープンセッションでは、内藤先生の講義を受けている大学生のみなさんと話す場を設けました。

奥野
オープンセッションでの学生さんたちの言葉は印象深かったです。「やりたいことを語れる場所があまりないけれど、チャンスがあれば話をしたい」「友達や家族よりも、親しすぎない人の方が話をしやすい」。

夢を口にして向き合うためになにが必要なのかヒントをもらえて、語りやすい環境の大切さを実感しました。

内藤
学生たちにとっても、大人と話せる機会は、日常生活とは異なるインパクトがあったようです。若者とのやりとりに手応えを感じ、オープンセッションが今のドリクエの活動へとつながるきっかけになりました。

大谷
夢というテーマが非常に大きいものだったので、最終的にどこを目指すのか決めるのは難しかったですよね。「学生のやりたいことを見つける活動」が、私たちの道筋を見出すきっかけになったと思います。

間瀬 
「つなげる30人」の最終プレゼンでは、社会人がメンターとなって大学生の夢を応援する「夢就活」を主なアクションのひとつとして提示しました。

そうして、第2期のプログラムが終わった後、活動の第一歩として、内藤先生のゼミの4年生の就職活動を、ドリクエのメンバーでサポートさせてもらいました。学生さんの悩みなどを聞いて私たちが応える。目先の内定をとるための話ではなく、将来的なキャリア形成についてイメージを膨らませられるように話をしました。

どんな業界、企業が考えられるのか。先々の転職も視野に入れたっていい。「夢就活」のコミュニケーションを、まず私たちが実践してみました。

奥野
私は個別のやりとりも多く、就活の相談に乗りながら、たくさんの刺激をもらいました。「自分のキャリアはどうだろう?」と改めて振り返ることもできたと思います。

――なるほど、みなさん自身の実践を経て、オンラインで大学生と社会人が語る場へステップアップしたんですね。

間瀬
そうですね。もっといろんな人を巻き込んでみようと、1対1あるいは1対2の少人数で、大学生と社会人が話をできる企画をしました。大人が学生の相談に乗るのではなく、フラットな目線で「就活」「キャリア」「社会人生活」「学生生活」について、聞きたいことを聞き、今の思いや経験談を語り合える。

安心して対話できるように約束事をまとめたドリクエの「攻略本」も作成しました。大学生は内藤先生のゼミ生を、社会人は「ナゴヤをつなげる30人」第2期の関係者の方を募りました。

――実践を通して気づいたことなどありましたか?

内藤 
就活に臨む学生は、社会人とはどんなものかより具体的なイメージを持てたようです。「社会人の方と話して前向きになれた」という声もありました。

高校や大学へ進学する際は、偏差値を基準に「このくらいの大学かな」と学校を選ぶ人が少なくなりません。それが、就活では無数の選択肢の中から行き先を決めなくてはいけない。迷いを抱える彼らにとって、言葉を発し、誰かに聞いてもらえる有意義な機会だと思っています。

奥野 
「社会人は完璧な雲の上の存在だと思っていた」という学生さんもいました。

そんなことはないですよね。大人になっても悩んだり、迷ったりする。そんなリアルな姿を知って欲しい。自分の経験も活かし、女性ならではのキャリア形成や働き方についても伝えたいです。

大谷 
オープンセッションの前は、「今の学生はやりたいことがなかなかないのでは」とイメージしていたんです。でも実際は多くの人が「もっと自分のやりたいことを聞いてもらいたい」と意欲的で。

驚きとともに自分が恥ずかしくもなりました。学生と社会で様々な経験をしている方をつなげる活動に、社会をより良く変える可能性があると感じています。

間瀬 
社会人の参加者からは、先ほどの奥野さんのように「自分の参考になった」「学生さんのピュアさに触れて心が洗われた」という感想をいただきました。社会人が学生の就職を応援することで気づきを得る、リバースメンタリングの効果もあると実感しています。

「夢就活」は、就活のテクニック指導ではありません。学生さんたちには、就活という狭い枠ではなく、広い視野で人生を考えてもらいたい。いろんな人と出会う経験が、より広い視野で企業や仕事を探すきっかけになれば。

他方で、社会人にもプラスを生む場なので、幅広い年齢層の方が参加できる場にしていきたい。社会人同士での対話も面白いと思うので、「自分達もドリクエをやってみたい!」という声もいただけると嬉しいです。

みんなが夢を語れる社会へ一歩ずつ。

――今後の活動の展望を教えてください。

間瀬
まずは大学生の応援からスタートしましたが、ドリクエの目標は世代を問わず夢を気軽に語れるようなまちに名古屋がなることです。活動を通して、夢を語るのはやはり簡単ではないと自覚しました。自分の夢を言葉にするのは、私だって難しい。

だからといって、一部の人しか夢を持てないのではもったいないですよね。すぐには言い表せないけれど内に秘めている思いを引き出すお手伝いがしたい。どんなやり方があるか、地道に模索していきます。

奥野
私も、夢とポジティブに向き合う人を増やすことで、まちを元気するための底上げがしたいです。内藤先生の大学だけでなく、自分の母校にも広められないかと考えています。

大谷
今は「学生のやりたいことを見つける」のが活動の中心になり、どうしても就活の話題になることも多いです。就活から夢の話へどうつなげていけるかも課題だと思います。なにごとも継続が大切ですから、試行錯誤を重ね活動を更新していきたいです。

内藤
今は場づくりを繰り返しながらメソッドを蓄積している段階です。他の大学で実施したり、高校生や若手社会人へ年齢層を変えたり、フィールドを徐々に広げていけたら。きちんと持続していけるドリクエの方法論をじっくりと組み上げていきます。

◆話を聞いた皆さん◆

間瀬さん
イノベーション・ファシリテーター/コーチ。想いを持つ人のアシスト役として活動。ブラザー工業勤務。

奥野さん
トヨタ販売会社勤務。お客様から選ばれる販売店にするため社内制度企画改定を行う。

内藤さん
愛知学院大学講師。スポーツとまちづくりを専門とし、研究だけでなく、学生と共に様々な地域貢献活動を実施。

大谷さん
みずほ銀行勤務。目まぐるしく変わる時代の中、金融機関の新しい価値創造に取り組む。

文章:小林 優太

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